Dr.石川の健康長寿ナビ vol.5
テレビやラジオでおなじみの石川恭三先生(杏林大学名誉教授・医師)に健康で長生きするためのコツを教えていただきます。
今月は「適正体重の維持」の大切さについてです。
8月「適正体重の維持」(動脈硬化・糖尿病の予防)
自分の体重が適正か否かを判定する指標の1つとして広く用いられているものに体格指数(BMI)[BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)]があります。BMI値の判定基準は一般的には、18.5未満で「やせ」、18.5以上25未満で「標準」、 25以上30未満で「肥満」、30以上で「高度肥満」と判定されます。BMIが22の場合、もっとも病気になりにくいとされています。したがって、適正体重は“身長(m)×身長(m)×22”で算出されます。
肥満は余分な脂肪が体内に蓄積した状態をいいますが、健康上とくに問題になるのは脂肪が内臓周辺に異常に蓄積した肥満、いわゆるメタボリック症候群です。内臓周辺の脂肪の蓄積は、動脈硬化に基づくさまざまな病気の大もとになります。この脂肪蓄積が原因となって次から次へと病気を作り出し、高血圧、糖尿病、虚血性心臓病、脳卒中などの病気の発生へと、まるでドミノ倒しのように進展していくのです。
適正な体重(BMIで18.5以上25未満)を維持するためには、適正なエネルギー摂取と運動が不可欠です。1日に必要なエネルギー(kcal/体重1kg)は生活強度が軽い場合は22~25、中等度の場合は25~30、やや重い場合は30~35、重い場合は35以上となります。したがって、“適正なエネルギー摂取=適正体重×生活強度に応じた適切なエネルギー”ということになります。そして、適正な運動は1日1万歩(おおよそ300kcal)を目安に、無理なく楽しみながら行うことです。
内臓周辺の脂肪が必要以上に蓄積するということは、産業廃棄物から有害物質が洩れ出ているのと同じように、高血圧を引き起こすアンジオテンシノーゲン,インスリン抵抗性の元凶であるTNF-α、血栓形成に関与するPAI-1、などが湧き出しているのです。また、内臓脂肪が貯まるとアディポネクチンの量が減り、糖尿病や動脈硬化になりやすくなります。アジポネクチンはインスリンの働きを助けるといわれています。アディポネクチンを増やすには体重を減らすとよく、体重を1割減らすだけで約1.4~2.0倍にアディポネクチンが増えることがわかりました。
内臓周辺に過度の脂肪が蓄積しないためには、太らないようにしなくてはなりません。それには、「腹八分目」が大切です。「肥満大敵、死(脂)の用心、センベイ1枚デブのもと」、適正体重の維持が動脈硬化や糖尿病の予防にきわめて大切であることを多くの人たちに知ってもらいたいのです。