Dr.石川のちょっと健康相談 vol.18
テレビやラジオでおなじみの石川恭三先生(杏林大学名誉教授・医師)に日常生活に感じるちょっとした不調について解説していただきます。これを機に、自分のカラダに目をむけてみてはいかがでしょうか。
今月のテーマは「立ちくらみがする」です。
9月「立ちくらみがする」
立ちくらみとは、立ち上がったときにフラフラッとめまいを感じることですが、これは立ち上がった時に血圧が急に下がり(起立性低血圧)、一時的に脳への血流が減少した結果生じる脳循環不全の症状です。健康な人でも立ちくらみは起きます。立ち上がると重力で血液が下半身に集まるため、脳へ行く血液が一時的に減り意識が薄らぐことがあります。
しかし、人間の体は、血圧を一定に保ち、脳の血流を正常に戻す機能を持っています。血圧が低下すると頚(けい)動脈(どうみゃく)などにあるセンサーが血圧の変動を感知して、交感神経を介して心臓の動きを強めたり、血管を収縮したりして血圧を回復させるように働きます。こうした体の仕組みが上手く働かないと起立性低血圧が生じます。この起立性低血圧は思春期に発症しやすいのですが、高齢者にも多くみられます。
低血圧の人は立ちくらみを起こしやすいのですが、高血圧の人でも、ちょっとした体位の変換で血圧が大きく変化することがあり、その血圧の変化にともなって、脳へ行く血液量が急に少なくなれば立ちくらみが生じます。また、高血圧の人は降圧薬の服用によって一時的な低血圧状態になることがあり、このときに立ちくらみが起こりやすくなります。
高齢者では「食後性低血圧」に注意しなくてはなりません。食事をすると消化のために血液が胃や腸に集まります。その分、心臓に戻ってくる血液量が減りますので血圧が下がります。若い人や健康な人では、このときに自律神経が働いて心拍数を上げ血圧を元に戻しますが、高齢になると自律神経の調節システムがうまく働かなくなって低血圧になってしまうのです。食後に血圧が低下して、顔から血の気が引いて、めまいやふらつきが起き、ひどいと失神するケースもあります。
食後の低血圧を防ぐためには、腹八分目を心がけ、ゆっくりと時間をかけて楽しく食事をとることです。食後に血圧低下が認められる人は、晩酌を控えたほうが無難です。カフェインは交感神経の働きを促進させて血圧を上昇させますので、食後の緑茶やコーヒーはお勧めです。そして、食後の30分から1時間ぐらいは、急に立ち上がることは避けたほうがいいでしょう。