HOME > 健康コラム > ほっとひと息、こころにビタミン バックナンバー > ほっとひと息、こころにビタミン vol.3

ほっとひと息、こころにビタミン vol.3

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

失敗を生かすコツ

新年度になって新しい職場に異動になったり、新しい仕事に取り組むことになったりした人も、少しずつその環境や仕事に慣れてきた時期だと思います。そのように慣れが出てくると、それまでのような緊張感が取れてきて、思いがけないところで失敗することがあるので注意が必要です。

注意をするといっても、失敗しないようにするということではありません。不注意による失敗が起きないように気を付ける必要はありますが、いくら気を付けていても失敗することはあります。そうしたときに大事なのは、失敗したときに、もうこれで終わりだと考えないようにすることです。

「終わりだ」というのは少し大げさな言い方ですが、私たちはうまく行かないことがあると、現実以上に悪く考えてしまう傾向があります。そのように考えるのは、緊張感を取り戻して、今起きている問題に取り組もうとする自然なこころの動きです。

確かにそれは、問題を解決していくためには大切なこころの動きなのですが、あまりに悪く考え過ぎると、その先に進んで行こうという気持ちが持てなくなってきます。自信が無くなるからです。そうしたときには、少し冷静になって、何が問題なのかを具体的に考えるようにしてみてください。どこがうまくいっていて、どこがうまくいっていないのかを考えてみるのです。

それと同時に、どのようになれば良いと自分が考えているかを再確認して、そのようになるためにはどのようにすれば良いかを考えてみます。このようにして、自分の目標と手立てを再確認できると、失敗の中に隠れている問題解決のヒントを見つけやすくなります。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

バックナンバー