HOME > 健康コラム > ほっとひと息、こころにビタミン バックナンバー > ほっとひと息、こころにビタミン vol.8

ほっとひと息、こころにビタミン vol.8

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

原因探しではなく手だて探しを

親しい人が悩んで相談してきたとき、私たちは当然、力になりたいと考えて相談に乗ります。その気持ちは大事なのですが、こうしたときには気が付かないうちに相手を傷つけていることがあるので注意が必要です。

悩んでいる人は、自分のことを信じられなくなっています。その一方で、親しい人は、そんなに悲観的に考えなくても良いのではないかと思えて、もっと自信を持つようにと声を掛けたくなります。つい励ましてしまったりもします。しかし、そのように言われると、悩んでいる人は自分の悩みや苦しみが分かってもらえなかったと考えてますますつらくなります。

こうしたときには、単に励ましたり自信を持つように言ったりするのではなく、その人が工夫しているところに目を向けて、それがどのように役立っているかを具体的に指摘するようにします。その上で、問題解決に取り組むようにするのですが、そのときに私たちはつい、原因探しをしてしまいがちになります。原因が分かれば問題を解決できるのではないかと考えてのことですが、原因が分からないこともよくありますし、原因が分かったとしても問題を解決できるとは限りません。

そうしたときには、原因探しではなく、手だて探しをした方が良いでしょう。つまり、今直面している問題に目を向けて、どのようにすれば先に進める可能性があるかを一緒に考えていくようにします。そのときに、一気に解決できる手だてが見つかれば良いのですが、そのようなことはあまりありません。ですから、少しでも先に進めるような手だてを見つけていけるように話をしていくようにしましょう。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

バックナンバー