ほっとひと息、こころにビタミン vol.15
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
緊張を味方にするコツ
新しく会社や学校に入って緊張していた若い人たちも、少しずつ環境に慣れてきた頃でしょう。その一方で、新しいクライアントに紹介されて話をしたり、人前で報告や発表をしたりしなくてはならない場面が出てきて、これまでとは違った緊張を感じる場面が増えているのではないでしょうか。
もっとも新しい人と話をしたり人前で発表をしたりするときに緊張するのは、若い人に限りません。それは、そうした感情が自分を守る働きをしているからです。
誰とでも親しく話をしたりする人は、なれなれしすぎて相手に不愉快に思われる可能性があります。つい口を滑らせてしまうなど、思いがけない失敗をすることもあります。準備不足のまま発表して不評を買う可能性もあります。
こうしたときには、緊張している自分を受け入れるようにしましょう。そのうえで、問題を大きく捉えすぎていないかどうか、考えてみてください。自分を守ろうとするあまり、問題を大きく捉えすぎている可能性があるからです。
問題が起きる可能性があるときには、問題が起きないようにするための準備をします。問題が起きたときの対応策についても考えておくようにします。もちろん、自分で対応するだけでなく、必要に応じて助けてもらえるように準備できるとなお良いでしょう。
そこまで準備をすれば、後は実行するだけです。その場面で緊張しているようであれば、ゆっくり何回かおなかで息をしてみましょう。そっと握り拳を作って力を入れたり緩めたりすると緊張がとけてきます。ぜひ試してみてください。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。