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ほっとひと息、こころにビタミン vol.24

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

自分でできないことにまで責任を感じない

私は講演や研修で、「友達を食事に誘う」のと「友達と食事をする」のと、どちらが難しいかという話をよくします。読者の皆さんはどう思われるでしょうか。実は、友達を食事に誘うより友達と食事をする方がはるかに難しいのです。

友達と食事をしようと思っても、忙しいからと相手に断られてしまうと、食事をすることはできません。でも、友達を食事に誘うだけだったら、電話でもメールでも自分だけで実行することができます。そう、この2つの違いは、自分だけでできるかどうかというところにあります。

友達と食事をするように、他の人の判断や都合が影響する場面では、自分だけでいくら頑張っても実現できないことは少なくありません。ところが、悩んでいる人の話を聞くと、その区別がきちんとできずに自分ばかりを責めていることがよくあります。子供が期待通りに勉強してくれないと嘆いている親や、一生懸命やっているのに思うような介護ができないと言って落ち込んでいる介護者がその例です。

でも、考えてみれば、いくら子供でも一人の独立した人間です。介護を受ける人だって同じです。そうした人を相手にしたとき、自分の思うように動かないのは自然なことです。それを全て自分の責任のように考えてしまうと、いかにも自分がダメなように思えてつらくなってきます。そのようなときには、どこまで自分が責任を持ってできることなのか、どこからは相手に任せるのが良いのかといったことを判断するよう心掛けるとよいでしょう。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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