ほっとひと息、こころにビタミン vol.30
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
お子さんの新学期を迎えて
今年の夏休みはどうだったでしょうか。新型コロナウイルス感染症のため、いつもより期間が短くなった学校も多かったのではないでしょうか。それでも、しばらく学校に行かないでいると、以前のように決まった時間に起きて学校に行くのがおっくうになるものです。
私は、いっとき勉強が苦手だった時期があり、長期休暇の後、学校に行って勉強についていけるかどうか心配でした。それでも学校に行き続けることができたのは、私を受け入れてくれる仲間と会えることが楽しかったからです。
もちろん、何が何でも学校に行かなければと考えるとプレッシャーになってしまいます。どうしても苦痛なときには無理をしなくても良いと思いますが、学校に行きたいという気持ちが少しでもあるようだったら、学校に行って楽しめることを思い浮かべるようにすると良いでしょう。部活であったり、友だちとのたわいない雑談であったり、人によっては勉強であったり、楽しい気持ちになれるようなことをイメージすることで前向きな気持ちが生まれてきます。
そして、もうひとつ意識してほしいのが、最初に動き始めるときに一番エネルギーが必要になるということです。自転車に乗るときのことを考えてほしいのですが、最初にこぎ始めたときは力が必要ですが、一度動き始めると、慣性の力で簡単に前に進んでいくようになります。
毎日の生活でも同じです。最初は少し頑張って学校に行かないといけないかもしれませんが、一度行き始めると、あまり力を入れなくても自然に規則正しく学校に行けるようになってきます。こころの慣性を上手に利用してください。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。