ほっとひと息、こころにビタミン vol.35
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
姿勢を正して心を元気に
2月は1年で最も寒さが厳しい時期です。その上、新型コロナ感染症の影響で家の中で生活する時間が増える人も多いのではないでしょうか。
そのように家の中にいることが多くなると運動量が減ってきて、筋肉の力が落ちてきます。それだけではなく、よくないことを思いだして考え込むことが増えるので、注意が必要です。これまでの研究からも、楽しいことが減ってくると気持ちが沈みがちになってくることが分かっています。
心の健康のためには、家の中で楽しめることを見つけたり、感染対策に気を使いながら外に出て体を動かして気分転換したりすることが大切になってきます。家の中で生活するときには姿勢にも注意をしましょう。寒いときにはつい背中が丸まってうつむきがちになってしまいますが、そうすると気分が落ち込みやすくなるからです。
以前、スマートフォン、タブレット端末、パソコンのいずれかを使って同じ課題の解決に取り組むという研究が行われたことがあります。使う機材によって気分の変化が見られるかどうかを調べる研究です。
その結果、スマートフォンを使うと一番落ち込みやすく、パソコンで一番落ち込みが少なく、タブレットだとその中間だったということが分かりました。パソコンに比べて、スマートフォンでは、課題に取り組むときに背中を丸めて下向きになることが、こうした気分の変化に影響するのではないかと考察されています。この実験からも、姿勢が気分に影響することが分かります。
姿勢にも気を付けながら寒い冬を乗り越えるようにしましょう。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。