ほっとひと息、こころにビタミン vol.52
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
小さな喜びをシャワーのように
新型コロナウイルス感染症が報告されてから2年半がたちました。最初はウイルスの正体が分からず、ずいぶん不安な気持ちになった人が多かったと思います。さまざまな行動制限を当然と考える人がいる半面、不当だと考えて怒りを感じる人もいました。しかし、最近は、新型コロナウイルスへの理解が進んだためか、強い行動制限が解かれたり、マスクの着用の指針が改められたりするなど、柔軟な対応が可能になりました。今年のゴールデン・ウイークには多くの人が自宅を離れて楽しんでいる様子が見られました。音楽祭やプロスポーツの会場でも、学校の運動会でも、久しぶりのリアル開催に喜んでいる人が多くいました。
このように、生活を楽しむことは、こころの健康のためにとても大切です。日々の生活の中で楽しいことややりがいのあることが減ってくると気持ちがふさぎ込みやすくなります。逆に、ワクワクすることが増えると、こころが晴れますし、さまざまなことに前向きに取り組もうという意欲も湧いてきます。
もちろん、人によって関心があることはさまざまですから、その活動は自分に合ったものであれば、何でも取り組むようにしてみてください。ただ、そのとき、あまり大きな喜びややりがいを求めないようにしてください。大きな喜びを感じられるようなことはそんなにありませんし、仮に大きな喜びを感じたとしてもしばらくたてば消えていきます。
それよりも、親しい人と時間を過ごしたり、ちょっとした手助けをしたり、趣味の時間を持ったりするなど、日々の小さな喜びをシャワーのように浴びるのが良いでしょう。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。