健保ニュース
健保ニュース 2024年7月下旬号
報告を求めるかかりつけ医機能
河本専務理事 最低限、疾患の報告を
厚生労働省の「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」(座長・永井良三自治医科大学学長)は5日に会合を開き、報告を求めるかかりつけ医機能の内容について議論した。
この日の会合では、厚労省が「報告を求めるかかりつけ医機能の内容案」を提示。
同案では、「かかりつけ医機能報告制度」における、継続的な医療を要する者への発生頻度が高い疾患にかかる診療その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う「1号機能」に関する報告事項①~③などを整理した。
「1号機能」の「具体的な機能」は、「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療を行うとともに、継続的な医療を要する者に対する日常的な診療において、患者の生活背景を把握し、適切な診療および保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する機能」と明記。
報告事項の①は、「具体的な機能」を有することおよび「報告事項」について院内掲示により公表していることとした。
②は、厚労省が案1~3を提示。案1は、「かかりつけ医機能に関する研修の修了者または総合診療専門医がいること」とした。合わせて、研修充実に取り組み、必要な研修修了者数の確保を行う必要があり、それまでの間、研修の修了者および総合診療専門医の有無を報告すればよいこととした。
案2は、「かかりつけ医機能に関する研修の修了者および総合診療専門医の有無を報告すること」と整理。改正医療法施行後5年を目途に、研修充実の状況等を踏まえ、研修の修了者または総合診療専門医がいることを報告することについて改めて検討するとした。
案3は、「かかりつけ医機能に関する研修の修了者および総合診療専門医の有無を報告すること」とした。
③は、厚労省が案(1)~(4)を提示。案(1)は、35項目の症状ごとの▽一次診療の対応可能の有無、いずれかの症状について一次診療を行う▽患者からの相談の対応可能の有無、いずれかの症状について患者からの相談に応じる─ことができることと整理した。
案(2)は、▽17の診療領域ごとの一次診療の対応可能の有無、いずれかの診療領域について一次診療を行う▽35項目の症状ごとの患者からの相談の対応可能の有無、いずれかの症状について患者からの相談に応じること─ができることと明記。
案(3)は、▽17の診療領域ごとの一次診療の対応可能の有無、いずれかの診療領域について一次診療を行うこと(一次診療を行うことができる疾患も報告する)▽医療に関する患者からの相談に応じること(継続的な医療を要する者への継続的な相談対応を含む)─ができることとした。
案(4)は、▽17の診療領域ごとの一次診療の対応可能の有無、いずれかの診療領域について一次診療を行うこと▽医療に関する患者からの相談に応じること─ができることと整理した。
①~③が「可」の報告の場合は「1号機能を有する医療機関」として「2号機能」の報告を行う。
このほか、厚労省は、患者調査による推計外来患者が多い傷病をもとに検討して設定する、「一次診療に関する報告できる疾患案(40疾患)」とその内訳を例示。傷病名や推計外来患者数、主な診療領域を整理した。
健保連の河本滋史専務理事は、②について、「かかりつけ医機能の質を担保するため、本来は、案1のように研修の修了者あるいは総合診療専門医がいることを要件とすべき」と発言。一方で、「実質的な取り扱いが案1と同様で、医療現場の皆さんが受け止めやすく円滑な施行につながる場合、案2でもやむを得ない」との考えを示した。
関係団体に研修内容の充実を求めるとともに、多くの医師がかかりつけ医機能を発揮できる体制整備に向け、今後5年間で量と質の両面からしっかり取り組むことに期待を寄せた。
③については、「国民・患者にとって分かりやすく、適切な医療機関の選択に資するとの観点から、本来は症状を報告すべき」と発言。一方で、「現時点で症状を報告する環境が整っていない場合は、最低限、案(3)にあるような疾患について報告を求めるべき」と強調した。
合わせて、「今回、継続的な医療を要する高齢者を想定し、疾患名をある程度分かっている患者を対象とした制度設計がされるため、案(3)でスタートすることはやむを得ない」との考えを示し、患者の受け止めを含め、制度の実施状況をみながら、②の案2と同様に5年後を目途に症状の取り扱いも改めて検討するよう要望した。
城守国斗構成員(日本医師会常任理事)は、②について、「研修内容等を検討していく時間を鑑みると案2が妥当」と発言した。③については、「地域を面として支えるためのかかりつけ医機能の制度整備に向け、医療現場に混乱を生じさせず、多くの医師が参画できるような一次診療となることが好ましい」と指摘。また、「症状より、診療領域の報告の方が医療機関間で連携しやすい」と述べ、案(3)が望ましいとの考えを示した。
このほか、②については、多くの構成員から「多くの医療機関が参画できる観点から案2が適当」との意見が出され、③については、「患者の分かりやすさ」や「医療機関の対応のしやすさ」などを鑑み、案(3)が妥当との発言が多くみられた。