健保ニュース
健保ニュース 2024年11月中旬号
電子カルテ情報共有サービス
医療部会 運用費用の負担を議論
社会保障審議会医療部会は10月30日、医療DXのさらなる推進について委員から意見を聴取し、電子カルテ情報共有サービスにかかる法制化の方向性を概ね了承した。
この日の会合で厚生労働省は、電子カルテ情報共有サービスの法的位置づけを、①医療機関から支払基金等への3文書6情報の提供②3文書6情報の目的外利用の禁止③運用費用の負担④電子カルテ情報共有サービス導入の努力義務⑤次の感染症危機に備えた対応─といった事項で規定することを提案した。
③は、電子カルテ情報共有サービスで発生するシステム運用費用の負担者や負担方法を規定する。運用費用としては、▽医療機関の電子カルテシステムの保守費用▽3文書6情報の提供費用▽支払基金のシステムにかかる運用費─を想定。関係者間のメリットを踏まえた負担のあり方の検討が必要とした。
また、厚労省は、電子カルテ情報提供サービスの稼働により、「患者・被保険者」、「医療機関等」、「医療保険者」ごとに想定される主なメリットを提示した。
すべての関係者を対象とするより質の高い安全な医療の提供に加え、「患者・被保険者」には、▽外来の待ち時間の減▽医療情報等の健康管理への反映─。「医療機関等」には、▽事務コスト削減効果▽効率的な働き方の実現と医療の担い手の確保─。「医療保険者」には、▽特定健診や事業者健診結果の迅速かつ確実な取得▽健診結果の電子化の手間削減─などのメリットがあるとした。
健保連の河本滋史専務理事の代理として出席した松本真人理事は、「電子カルテ情報共有サービスが医療現場に普及しなければ、患者や保険者が十分なメリットを享受することはできない」との考えを示した。
2030年としている普及見通しに向け、具体的な普及促進策や導入目標を盛り込んだ工程表が国から示されることが議論の前提になると主張。「少なくとも一定程度、普及するまでの導入期の費用は国が責任を持つべき」と強調した。
井上隆委員(日本経済団体連合会専務理事)は、利用者・関係者によるメリットの実感が必要とし、普及した段階での負担の検討を求めた。
佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長) は、実際の効果や実現見通しが分からないのでは、被保険者に負担を求めても理解・納得が得られないと指摘した。
他方、泉並木委員(日本病院会副会長)は、病院の経営状況が厳しいなか、システム開発や運営コストが高く負担が重いと訴え、国によるインフラ整備として実施するよう要望した。