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健保ニュース 2025年4月中旬号

医師偏在対策の手当事業創設など
医療法改正案が衆院審議入り
福岡厚労相 保険者拠出の財政影響に言及

地域医療構想の見直しや医師偏在是正に向けた総合的な対策、医療DX推進を柱とする「医療法等の一部を改正する法律案」が3日、衆院本会議で審議入りした。福岡資麿厚生労働相が同法案の趣旨を説明し、各党の代表質問を行った。同法案は医師偏在是正対策として、都道府県知事が重点的に医師を確保する必要がある区域を定め、当該区域の医師に対し保険者からの拠出による手当を支給する事業を設ける。手当の財源について福岡厚労相は「保険給付と関連性がある」として保険者に拠出を求めつつ、「本事業の財源は診療報酬改定において一体的に確保するため、医療給付費や保険料は増加しない」と保険者への財政影響に言及した。同法案の施行日は、一部を除き令和9年4月1日。

3日の衆院本会議では、福岡厚労相が医療法改正案の趣旨を説明した。
 同法案提出の目的について福岡厚労相は、2040年頃を見据え、医療と介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少などの課題に的確に対応するため、質が高く効率的で持続可能な体制構築が求められていることを踏まえ、▽地域における医療機関の機能分化、連携の推進▽医師偏在是正▽適正な医療の提供のための環境整備と医療現場の業務効率化の推進──により「良質かつ適切な医療提供体制を構築する」と説明した。

法案の主な内容は、第1に、2040年頃を見据えた新たな地域医療構想について、▽病床のみならず入院、外来、在宅医療、介護との連携を含む将来の医療提供体制全体の構想とする▽地域医療構想調整会議の構成員として市町村を明確化し、在宅医療や介護との連携などを議題とする場合に参画を求める▽病床機能に加え医療機関機能の報告制度を設ける──などの見直しを行う。

また、オンライン診療を医療法に定義することで、その手続きや受ける場所を提供する施設の規定を整備するとともに、美容医療を行う医療機関への定期報告義務を設ける。

第2に、医師偏在是正に向けて、都道府県知事が医療計画において「重点的に医師を確保すべき区域」を定めることができるようにしたうえで、当該地区の医師に対し、保険者の拠出により手当を支給する事業を設ける。

一方、外来医師過多区域では、無床診療所開設希望者に対し、都道府県知事が地域に必要な外来医療を確保するために医療の提供を要請できるようにするなど対応を強化する。

このほか、保険医療機関の管理者に対し、保険医として一定年数の従事経験を要件とし、管理、運営の責務を課す。

第3に、医療DX推進に向けて、電子カルテ情報共有サービスを活用した医療機関での電子カルテ情報の共有や感染症発生届の届出を可能にする。

また、医療情報の二次利用推進のため、厚労大臣が保有する医療・介護関係データベースの仮名化情報の利用、提供を可能にする。

さらに、社会保険診療報酬支払基金について、従来の審査支払業務に加え医療DX業務を担うため、名称や法人目的、組織体制などを見直す。あわせて、厚労大臣は医療DX推進のための医療情報化推進方針を策定する。

代表質問では、宗野創(立憲民主党)、猪口幸子(日本維新の会)、沼崎満子(公明党)の3氏が登壇した。

保険者の拠出による医師の手当支給の合理性を問われた福岡厚労相は、▽医師の人件費は診療報酬で賄われる▽診療報酬で対応した場合、特定の地域の患者負担増加を招く──ことから、保険者の役割も踏まえ「保険給付と関連性がある」と答弁した。そのうえで、医師への手当の財源を診療報酬改定において一体的に確保することから、「本事業の実施により医療給付費や保険料は増加しない」と保険者への財政影響に言及した。

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