健保ニュース
健保ニュース 2025年5月合併号
高額療養費の再検討
医療保険部会に専門委設置
患者から意見聴取 秋まで集中議論
社会保障審議会医療保険部会(部会長・田辺国昭東京大大学院教授)は1日、厚生労働省の提案により、高額療養費制度のあり方を検討する専門委員会を設置することを決めた。
専門委は委員長と学識経験者に加え、保険者や患者、医療機関、経済界・労働界などの関係者の意見を反映させる委員構成を想定する。患者団体や保険者団体などからのヒアリング結果を踏まえ、高額療養費制度のあり方を集中的に議論し、その状況を適宜、同部会に報告する。
政府は今秋までに高額療養費制度について再検討し、方針を決定するとしているが、専門委の開催時期や回数などについて、厚労省の佐藤康弘保険課長は「現時点で決まっていない」と述べた。検討にあたっては、ヒアリングや関係するデータの整備など丁寧なプロセスを重視する考えを示した。専門委の設置について、委員から異論はなかった。
健保連の佐野雅宏会長代理は、「専門委員会でしっかりと患者の声を聞くとともに、セーフティーネット機能としての役割を保つよう、丁寧に議論を進めてほしい」と述べ、専門委の設置に賛同した。一方で、「保険料負担者の納得感も極めて重要であり、給付と負担のバランスを踏まえて検討してほしい」とし、保険者として専門委への参画を要望した。
北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は、医療保険制度の持続可能性と高額療養費制度のセーフティーネット機能のバランスに配慮が必要とした上で、「関係者が納得できるように議論してほしい」と述べた。
城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「制度設計により医療にアクセスできない人を生じさせないことが大前提」としつつ、医療保険制度の持続可能性にも配慮した議論が必要との考えを示した。
中村さやか委員(上智大学教授)は、高額療養費制度の利用が患者の医療利用や健康、経済状況に与える影響など「実態解明のためにデータを整備してほしい」と要望した。
村上陽子委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は、検討にあたり、家計に与える影響のデータ提示や専門家からの意見聴取、見直す理由や必然性を共有する議論が必要だと主張した。
藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は、ヘルスリテラシーの向上やセルフメディケーションの推進など、まず自助を実践する重要性を指摘した。その上で、「小さなリスクは医療保険制度に頼る部分を減らし、深刻な病気には高額療養費制度で対応するのがあるべき姿だ」と主張し、制度の持続可能性確保に向けた幅広い検討を求めた。