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健保ニュース 2025年5月下旬号

「あらゆる手段」で見直しを
自民議連が皆保険堅持へ提言
健保組合への財政支援も

自民党の「国民皆保険を守る国会議員連盟」(会長・鈴木俊一総務会長)は13日、国会内で第9回総会を開き、健保連からのヒアリングを踏まえた「国民皆保険制度の堅持に向けた提言」を了承した。年齢によらない負担能力に応じた負担への見直しなど、「あらゆる手段を講じて取り組む」よう政府に訴えるとともに、健保組合への財政支援の維持・拡充などを求める内容。政府が6月にもまとめる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」や来年度の政府予算概算要求への反映を目指し、近く政府に申し入れる方針だ。総会には31人の国会議員が出席(代理出席61人)し、国民皆保険制度を支える健保組合への支援の必要性や、高齢者拠出金の負担の重さを指摘する意見が出た。

鈴木会長は冒頭のあいさつで、国保や協会けんぽに比べ政府の支援が手薄い健保組合を守るという議連の設立趣旨に触れた上で、高齢化や医療の高度化などで医療費が増加の一途をたどっている状況を懸念し、「健保組合を守れなくなると、国民皆保険の維持は難しくなる」と危機感を示した。

また、健保連が4月23日に発表した健保組合の令和7年度予算早期集計結果について、「昨年度に比べ若干改善したが、依然厳しい財政状況だ」と述べ、骨太の方針や来年度予算に健保組合の意見を反映させるよう、議員に協力を呼びかけた。

この日の会合は、当面の政策課題をテーマに、健保連と意見交換した。健保連の佐野雅宏会長代理は、健保組合の財政状況と「全世代型社会保障構築に向けた提言・要望」を説明した。

健保組合の財政は、賃上げによる保険料収入の増加や保険給付費の伸びの鈍化などの改善要因があってもなお赤字の見通しで、高齢者拠出金が重くのしかかる厳しい状況が続く。

改革工程の着実な実施
佐野会長代理が要望

佐野会長代理は2040年にかけて人口減少と高齢化の進展による医療費の増大が見込まれる中、現役世代に偏重した負担構造のままでは、給付と負担のアンバランスが拡大し、医療保険制度自体が崩壊すると危惧し、国民皆保険制度が危機的状況にあると強調した。

その上で、国、国民、保険者、医療提供者、事業主などすべてのステークホルダーが危機的状況を共有し、直ちに聖域なき見直しに取り組まなければ、将来に向けて国民皆保険制度を含め社会基盤を維持していくことができないと指摘。「全世代型社会保障の構築に向け、国民皆保険制度の現状を直視し、将来を見据え制度の持続可能性を確保するため、改革工程に基づく不断の見直しに取り組むべき」と訴えた。

改革の方向性に、①年齢によらない負担能力に応じた国民負担への見直し②保険給付範囲の見直し③医療・介護の提供体制の総合的改革の着実な実施④現役世代の負担軽減につながる歳出改革と公費負担の見直し──を挙げた。

併せて、当面の対策として、健保組合への財政支援を要望した。現役世代の負担軽減に向け、高齢者医療運営円滑化等補助金の維持・拡充や高額医療交付金交付事業への支援拡充に加え、子ども・子育て支援金徴収、子育て対策を含めた医療DXを活用した保健事業、マイナ保険証の活用など国の施策に貢献している健保組合への支援を求めた。

このほか、今国会に提出された法案に含まれる医師偏在対策や被用者保険の適用拡大に伴う保険料負担割合の特例措置に対する公費投入、来年の通常国会提出が見込まれる出産費用の保険適用への検討についても対応が必要だとした。

出席した議員からは「疾病予防などの保健事業に取り組む健保組合に政治として光を当てるべき」「医療制度を財政的に支えている健保組合を国としても支援しなければならない」「拠出金の負担の重さについて、加入者が納得できないのではないか」などの意見が上がった。

また、与野党から実施を求める声が相次ぐ消費減税については、消費税が重要な社会保障の財源であることから、現役世代の負担軽減には、減税よりも賃上げにつながる政策が重要だと指摘する意見もあった。

意見交換の後、「国民皆保険制度の堅持に向けた提言」案が提起され、議連の意見として採択した。健保連の主張を踏まえ、「政府においても、国民皆保険制度の堅持に向けて、あらゆる手段を講じて取り組むことを提言する」として、年齢によらない負担能力に応じた国民負担への見直しなどを進めるよう求める。

また、現役世代の負担軽減には、「医療保険制度の中核を担う健康保険組合の安定した運営の確保が不可欠」として、健保組合への財政支援を要望する。

総会終了後、議連の田畑裕明事務局長は記者団に、「5月中をめどに、提言を厚生労働相や財務相などに提出し、骨太の方針や政府予算概算要求への反映を目指す」と述べた。

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