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健保ニュース 2025年5月下旬号

出産検討会が議論取りまとめ
自己負担無償化 8年度めどに制度設計
佐野会長代理 「見える化」「標準化」が重要

「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」(座長・田邊國昭東京大大学院教授)は14日、厚生労働省が提示した「議論の整理案」を大筋で了承し、昨年6月以降10回にわたる一連の議論を終了した。この日の議論を踏まえた修正は田邊座長に一任した。

令和8年度をめどに、産科医療機関の経営実態にも配慮しつつ、費用の見える化を前提とした標準的な出産費用の自己負担無償化に向けた具体的な制度設計を進めるべきとした。今後、社会保障審議会医療保険部会に議論の場を移し、出産育児一時金や出産費用(正常分娩)の保険適用などの財源論も含めた検討を行う見通しだ。

健保連の佐野雅宏会長代理は、議論の整理案に盛り込まれた支援の方向性に「異論はない」とした上で、今後の制度設計にあたっては、現状の支援や実施主体、財源、費用構造を「見える化」し、「標準化」を検討していくことが重要との考えを改めて示した。

同検討会は、政府が5年12月に閣議決定した「こども未来戦略」に、妊娠期からの切れ目ない支援や出産費用の見える化、正常分娩の保険適用導入などの検討方針が盛り込まれたことを受け、医療保険、周産期医療、母子保健といった幅広い視点から、妊娠・出産・産後に関する支援の強化について議論を重ねた。

議論の整理案は、①費用の見える化を前提とした標準的な出産費用の自己負担無償化と安全で質の高い周産期医療提供体制の確保の両立②希望に応じた出産を行うことができる環境整備③妊娠期、産前・産後に関する支援等──を柱に、それぞれ「あるべき支援の方向性」を整理した。

また、構成員の意見を紹介する形で「今後の検討課題」を整理した。
 ①は基本的な考え方として、平均的な標準費用をすべて賄えるよう妊産婦の実質的な負担を軽減すること、周産期医療提供体制の確保に影響を与えないことを掲げ、自己負担無償化に向けた制度設計を進める方針を示した。

こうした考え方に基づく検討の視点として、▽出産に伴う診療・ケアやサービスを「医師等の判断に基づき実施されるもの」と「妊産婦が希望し選択するもの」とに選別した支援のあり方の検討▽分娩施設の医療提供実態や費用構造のさらなる分析▽中長期的な周産期医療提供体制のあり方を今後、地域医療構想や医療計画の検討の場で議論すること──を並べた。

今後の検討課題では、標準的な出産費用の「標準」が何かについて、具体的な整理、検討を必要とする意見を明記した。

自己負担無償化の方策をめぐっては、「正常分娩も保険適用とすべき」と記す一方、医療機関側が減収を危惧して主張した「保険適用になると自由度が効かなくなる」との意見も併記した。出産育児一時金の取り扱いについては、増額を求める意見がある一方、「増額には限界がある」「現物給付と合わせた柔軟な仕組みを求める」などの意見があった。

給付と負担の関係に関しては、「給付範囲の標準化や保険料負担者の納得感につながる内容とすべき」「公費、保険料、自己負担とのバランスをどう取っていくかが重要」との意見を明記した。

無痛分娩の保険適用
慎重意見を併記

②は支援の方向性として、出産費用の予見可能性を高め、妊産婦が希望して選択する診療・ケアやサービスについて、ニーズに応じ取捨選択できるようにしていくべきとした。

妊婦の間でニーズが増加している無痛分娩への対応については、「希望する妊婦が安全な無痛分娩を選択できる環境の整備を進めるべき」としつつ、「無痛分娩に対応した医療機関の分布には地域差があり、麻酔を実施する医師の確保や安全管理体制の標準化等、安全で質の高い無痛分娩の提供体制の確保に取り組む必要がある」とした。

今後の検討課題には、医療機関が提供した医療行為と費用がわかる明細書の無料発行や、「出産なび」における施設別費用内訳の公表を求める意見を記した。

無痛分娩に関しては、「標準化と質の向上の観点から、保険適用とする方向で検討すべき」といった意見と、「無痛分娩を実施している医療機関が少ない段階では、仮に保険適用しても、地域によって希望する妊婦に提供できず、給付に不公平が生じるため、保険適用は慎重に検討すべき」といった意見を併記した。

③は妊産婦本位の切れ目のない支援の充実、妊産婦健診の経済的負担の軽減、産後ケア事業等の推進を支援の方向性とした。

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