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健保ニュース 2025年5月下旬号

条件・期限付き承認の再生医療製品
松本理事 保険適用は慎重な検討必要

中央社会保険医療協議会(会長・小塩隆士一橋大経済研究所特任教授)は14日の総会で、前日に条件・期限付きで承認された再生医療等製品「エレビジス点滴静注」の保険適用について議論した。健保連の松本真人理事は、「本製品が本承認となる確度や価格の妥当性を踏まえた慎重な検討が必要」と述べた。

再生医療等製品の条件・期限付き承認制度は、有効性が推定され、安全性が確認できた場合に、販売先を限定するなどの条件や原則7年以内の期限付きで承認する仕組みで、エレビジス点滴静注の期限は3年とされている。

厚生労働省はこの日の会合に、同静注の保険適用に向けた論点として①昨年起きた2品目(コラテジェン筋注用4mgとハートシート)が本承認を得られなかったこと②本製品が高額になると想定されること③条件・期限付き承認を受けた製品の保険適用の一般的なあり方を今秋以降に議論すること──の3つを示し、委員から意見を求めた。

松本理事は①について、条件及び期限付き承認制度の意義を否定しないとする一方で、「条件・期限付き承認の製品は「仮免許」のようなものにもかかわらず、本承認の製品と保険適用をする上での取り扱いが同じであることは疑問」と指摘した上で、保険適用の検討の際には本承認となる確度が相当高いことを示すよう求めた。

②については、参考となる米国の価格が約4.8億円であることから、保険適用する場合に保険財政に大きな影響があると懸念し、価格の妥当性の検討が必要とした。

③については、限りある医療資源を適切に配分する観点も踏まえた議論が必要と強調した。

このほか、昨年起きた2製品のケースを受けて、有効性が確認できず本承認を受けられない事例を防ぐための条件及び期限付き承認の製品に関する厚労省の取り組みと、本製品の効果の程度について厚労省の見解を質した。

これに対し、厚労省の高江慎一医薬局医療機器審査管理課長は「再生医療等製品に係る条件及び期限付承認並びにその後の有効性評価計画策定に関するガイダンス」を昨年3月に公表し、条件・期限付き承認の際に、本承認に値する有効性評価を得られる検証的試験の形式の事前確認を企業とPMDA間で徹底していると説明。

また、製品の効果については、試験の結果から有効性は推定されなくても、長期の有効性データを追うことで検証できる確度が高いと述べた。

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、有効性の検証は難しいと理解を示した上で、「昨年の2品目は見極めが甘かったと言わざるを得ない」とし、過去の事例から判明した課題を踏まえ、医療保険の持続性の観点からも適切な対応となるよう慎重な検討が必要とした。

森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「再生医療等製品の性質を考えると、患者アクセスの観点から同承認を受けた製品は保険適用すべき」と述べる一方で、有効性・安全性が確認できない場合は速やかに削除する対応が必要とした。また、厚労省に対して、過去の問題点を整理し、再生医療等製品の特性を踏まえた議論ができるよう求めた。

この日の議論を踏まえ、エレビジス点滴静注の保険適用について議論を継続し、条件・期限付き承認を受けた製品の保険適用の一般的なあり方については今秋以降に議論することとした。

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