健保ニュース
健保ニュース 2026年2月上旬号
8年度改定へ中医協が公聴会
限られた医療資源を有効活用
澁谷工業健保組合西村常務が意見陳述
中医協は1月21日、令和8年度診療報酬改定に向けて公聴会を開いた。
公聴会は、石川県などの保険者や医療関係者ら公募で選ばれた10人が意見を発表。この中で、澁谷工業健保組合(金沢市)の西村聡常務理事は、「8年度改定で本体部分が大幅に引き上げられることにより、健保組合の財政にどのような影響を与えるのか非常に心配している」と懸念した上で、能登半島地震の被災経験も踏まえ、「限られた医療資源を有効に活用して地域に必要な医療体制を整備することは、喫緊の課題だ」との考えを示した。
健保組合の財政現状については、全国の健保組合の7年度予算では被保険者数と賃金の伸びに伴い、全体として保険料収入が増加しているが、「高齢者医療への拠出金の増加に追い付かず、被保険者と事業主の保険料負担はすでに限界に達している」と指摘した。
石川県の支部を含む11健保組合の財政状況も「保険料収入は増加したものの、多くの組合で保険給付費や後期高齢者支援金が増加し、保険料率の引き上げで対応している組合が存在している」とし、厳しい環境にあることを訴えた。
こうした状況下で、診療報酬本体を3.09%引き上げる8年度改定について、健保組合の財政に及ぼす影響を懸念し、重点配分する賃上げと物価高への対策を含めて、「費用を負担する被保険者と事業主が納得できる対応をお願いする」と要請した。
また、6年に発生した能登半島地震で自組合の加入者が被災した経験から、「地域で必要とされる医療を維持するための対応を、真剣に考えなければならないと痛感した」と強調した。
こうした観点から、ICTなどを用いて効率化を図りつつ、限られた医療資源を地域医療体制の整備に有効活用すべきとし、「スピード感をもった対応を期待している」と述べた。
8年度改定における物価上昇対策では、医療機関の機能による影響を踏まえた対応が重要と指摘した。賃上げ対応では、医療機関の従事者の賃金上昇に確実につなげ、その実態を検証可能とすることを重視した。
さらに、後発医薬品の使用促進では、加入者から使用に関して不安の声が届いているとし、引き続き、品質と安定供給の確保に向けた取り組みを推進するよう要請した。
バイオ後続品の使用促進については、加入者への働きかけなど「実際の取り組みをどのように進めたらよいのか、悩んでいるのが現状」と吐露し、医療機関、薬局、保険者が一体となって普及させることで、「加入者が安心して使用できる環境が整うことを期待する」と述べた。
また、入院では、人口構造と医療ニーズの変化に合わせて、機能の分化・連携・集約化を進めて最適な医療を実現すべきと主張した。
今後は病棟だけでなく、医療機関の機能に着目して地域で担う役割を明らかにする方向を重視し、「保険者としても地域の医療機関の役割が明確にわかることは、重要なことだと認識している」と述べた。
外来では、かかりつけ医機能について、仕事と治療の両立を図る現役世代にとっては、時間外診療への対応が重要な要素となるとし、患者負担に配慮しつつ、現役世代が安心して働き続けられる質の高い医療提供を強く求めた。
併せて、継続して受診している患者の通院負担を軽減するため、長期処方とリフィル処方の積極的な活用が必要と訴えた。
中小企業経営者の立場から、山本邦彦氏(美川物流代表取締役会長)は、「事業主や従業員の保険料負担は限界に達している」と窮状を説明した。
その上で、8年度改定に向けて、①賃上げに伴う診療報酬の増加分を、着実に医療従事者の賃上げに使う②効率的な医療提供体制の構築に取り組む③マイナ保険証のメリットを患者が実感できるようにするなど、医療DXを推進する──の3点を重視した。
高村伸幸氏(連合石川事務局長)は、看護職員など医療現場で働く全労働者の賃上げの実現を強く訴え、医療機関に実績報告を求めるとともに、これを検証する手続きが必要と述べた。
また、ICT機器などを活用する場合に看護配置基準を柔軟化する方向が8年度改定の論点となっているが、「安易に配置基準を柔軟化すれば、現場の負担増になりかねない。患者の安全や医療の質に問題が生じるのではないか」と不安視した。
診療所を経営する長尾信氏(長尾医院理事長)は、「かかりつけ医の機能を十分に発揮するためには、診療行為だけでなく、地域で医療を続けるための体制づくりも評価してほしい」と要請した。
診療所を「地域住民の健康を支える最後のとりで」と位置づけ、8年度改定に向けて慢性疾患管理や在宅医療、医療・介護の連携、24時間対応などの取り組みを評価するよう訴えた。
阪上学氏(金沢医療センター院長)は、災害の発生などで患者が急増しても入院対応できるよう、平時からの備えとして「病床に少しゆとりを持たせても、急性期医療機関の経営が成り立つような制度設計が望ましい」と指摘した。
救急を不採算部門に挙げ、「救急搬送件数は増加しているが、オンコールを含めた医療スタッフの待機にかかるコストが、症例数に依存する現行の出来高評価では十分に補填されない」とし、「機能の維持を評価する診療報酬体系へ抜本的に見直してほしい」と述べた。