健保ニュース
健保ニュース 2026年4月上旬号
健保連 第539回理事会
持続可能な社会保障へ 国民会議の議論進展に期待
国民・関係者 理解と行動で皆保険継承
健保連は3月19日、第539回理事会を開いた。冒頭にあいさつした宮永俊一会長は、政府が超党派の「社会保障国民会議」の初会合を開催したことに触れ、「将来世代に過度な負担を強いるのではなく、国民が真に納得して負担し、支え合える持続可能な社会保障制度の実現に向け、検討が進むことを期待している」と述べた。また、国民皆保険制度を将来に継承するためには、「国民や様々なステークホルダーに医療保険制度の現状を理解していただくとともに、持続可能な制度にするため、それぞれの立場で小さな気づきを得て、一歩となる行動を起こすことが大切だ」と指摘した。〈宮永会長の発言要旨は次の通り。〉
本日は本年度最後の理事会となるが、理事の皆様におかれては、年度末の大変お忙しいところお集りいただき厚くお礼申し上げる。また、日頃より健保連の活動に対し、健保組合の皆様には多大なるご理解とご協力を賜り重ねてお礼申し上げる。理事会の開会にあたり、一言あいさつを申し上げる。
令和7年度も残すところ10日あまりとなった。各健保組合におかれては、新年度に向けた事業の準備に取り組んでいると思う。この1年間を振り返ると、これまで以上に国内外が騒がしく、激動の1年だった。
国際社会では、現在もなお各地で地政学的緊張が続き、ウクライナ情勢の長期化や中東地域での米国、イスラエルとイランの対立激化、希少金属やサプライチェーン上での中国の影響と混乱などが複雑に絡み合い、これまで欧米が主導して築き上げ、半世紀以上続いてきた国際秩序の枠組みが大きく変容しつつある。
また、日本国内では、昨秋の高市内閣の発足後、先月の衆院選での自民党を中心とする与党の圧勝により、政治の安定の基盤を整え、力強い経済政策、外交・安全保障、社会保障改革などを推進する環境が名実ともに整った。
1年前と比べて、日経平均株価も上昇してきたが、足元のイラン情勢の影響で原油価格が高止まりする様相を見せており、さらなる物価への影響にとどまらず、経済安全保障上の影響が懸念される。
一方で、日本経済の持続的な躍動のために、何よりも大切な実質賃金の上昇に大きな影響を与える春闘は現在佳境を迎えている。賃上げ要求5.94%と、32年ぶりに6%を超えた前年を少し下回ったものの、物価高や人手不足の中で高水準の賃上げ要求が続いている。
賃上げで家計の所得が増え、消費を喚起し、国内投資によって供給力を下支えすることで、経済の好循環を生み出す。そして、適正な価格転嫁を進めて企業の収益性を維持し、さらなる設備・研究、人的投資に回る。こうした流れが中小企業などにも広がることで、持続的な経済成長を実現する社会・経済構造への転換が進むと期待している。
政府予算案
負担軽減に不十分
昨年末に閣議決定された2026年度政府予算案は3月13日の衆院本会議で可決され、その後、参院で審議が進められている。来年度の政府予算案では、我々が主張してきた高額療養費制度の見直しやOTC類似薬等の薬剤給付のあり方の見直しなど、膨張し続けている医療費の伸びを抑制する仕組みが盛り込まれた。
「負担能力に応じた負担」、「給付と負担のバランス確保」など我々が長年訴えてきた政策が実りつつあることを実感するが、すでに限界に達している現役世代の負担を軽減するにはまだまだ十分な内容とは言えない。
高市首相が設置を表明していた、与野党の垣根を越えて社会保障と税の一体改革を議論する社会保障国民会議が先日開催された。
会議の中で高市首相は、「近年は人口減少の本格化、少子高齢化の進行に加えて、物価上昇という新たな社会経済局面を迎えている。その中で、給付と負担のあり方などについて、全世代を通じて納得感が得られる、社会保障の構築に向けた国民的な議論を進める必要がある」と述べた。
人口減少が進む中、将来世代に過度な負担を強いるのではなく、全世代がそれぞれの能力に応じた負担をするなど、国民が真に納得して負担し、支え合える持続可能な社会保障制度の実現に向けて検討が進むことを期待している。
子ども支援金
医療保険者も重責担う
2026年度から新たに労使折半で負担し合う子ども・子育て支援金の制度運用が始まる。少子化対策は我が国にとって極めて重要な政策課題であり、社会全体で子どもと子育てを支える仕組みを構築することは大きな意義がある。
しかし、健保組合が実務を担うことになり、加入者や事業主への説明、徴収事務管理、システム対応など、現場の負担が大きく増加することも事実だ。特に制度開始時には、問い合わせが健保組合に集中する形となり、皆様には多大なご尽力をいただいている。
健保連としても、引き続き国に対し、現場の実情を踏まえた制度運営を求めていきたい。この制度は将来世代のために、今を生きる私たち全ての世代、全ての経済主体が一体となって、後の世代である子どもの誕生と成長、子育て世帯を応援する大切な仕組みだ。我々医療保険者もその重責の一翼を担っていきたい。引き続き、健保組合の皆様のご理解、ご協力をお願い申し上げる。
「提言」の前進へ
特性生かした取り組みを
先月の総会でも申し上げたが、日本の国民皆保険制度を将来にわたって引き継いでいくためには、広く国民や様々なステークホルダーに医療保険制度の現状をご理解いただくとともに、持続可能な制度としていくために、それぞれの立場で小さな気づきを得て、そこから一歩となる行動を起こすことが大切だ。
健保連では、昨年9月に「『ポスト2025』健康保険組合の提言」を発表し、健保組合の皆様にもご協力をいただき、まずは加入者・国民への「3つのお願い」の周知活動を進めてきた。2026年度はさらに前進し、「4つの約束」と健保組合が時代の変化にしっかりと対応することを目指す「5つのチャレンジ」に、それぞれの健保組合の状況や特性を生かしながら取り組んでいただきたい。
我々健保組合の最大の特長である保健事業をさらに発展させ、健保組合の持つ価値をより高め、加入者に実感していただくことが重要だ。健保連では、この「4つの約束」と「5つのチャレンジ」への各健保組合の取り組みを支えるサポートプランを作成し、丁寧に支援していく。
これまでも健保組合は事業主とともに、加入者の特性に応じたきめ細やかな保健事業を展開し、健康づくり・疾病予防などに取り組み、世界一の健康寿命の延伸につなげ、加入者の充実した生活のサポートと加入企業の発展に貢献してきた。
今回の提言に掲げる取り組みが定着することで、健康で活力ある日本の社会を作ることに貢献できると私は信じている。改めて、健保組合の皆様のご協力をお願い申し上げる。
冒頭に申し上げた通り、本日は今年度、そして理事の皆様の任期最後の理事会となる。この数年間は新型コロナウイルス感染症への対応をはじめ、医療保険制度を取り巻く環境が大きく変化した時期だった。私が健保連の会長職を拝命したのも、ちょうど6年前の令和2年だ。就任時は新型コロナへの対応がピークを迎えている時期で、皆様と直接お会いできる機会も限られていた。
そうした中で、医療従事者をはじめ、エッセンシャルワーカーが非常に献身的に仕事に従事していることで、我々の暮らしが支えられていると改めて気づかされ、そのご尽力に感謝を申し上げたことを覚えている。健保組合の皆様も、加入者の健康を守り、また医療が適切に受診できるよう日々苦労されていた。
会長職をあずかる身として、改めて健保組合の役割の重要性を実感するとともに、国民皆保険制度を将来にわたって維持していくことの重みを強く心に留めた次第だ。
そして、各健保組合が現場で努力を重ねて、加入者の健康を守るための取り組みを続けてきたことに、改めて深く敬意を表したい。皆様のご尽力こそが、日本の医療保険制度を支えている原動力であると確信している。
長きにわたるご協力、ご支援に心より感謝している。これからも、さらなるご助力をお願い申し上げ、私のあいさつとさせていただく。