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健保ニュース 2026年5月合併号

衆院厚労委 健保法改正案で参考人質疑
佐野顧問「健保連の主張に沿う」と評価
後期現役並み所得者の公費投入も要望

衆院厚生労働委員会(大串正樹委員長、自民)は4月21日、審議中の健保法等改正案について、健保連の佐野雅宏顧問ら5人の参考人から意見を聴取した。佐野顧問は、同法案が給付と負担のアンバランスの解消や負担能力に応じた負担、負担の公平性確保、保険給付の適正化・重点化といった観点から、「持続可能な医療保険制度の実現に向け、現役世代の保険料負担軽減が不可欠」とする健保連の主張に沿っていると評価した。

また、今後の制度見直しとして、高齢者医療の自己負担割合と年齢区分の見直しと、後期高齢者の現役並み所得者の給付費への公費投入の早期実施を主張。

後者について、本来公費が投入されるべき部分が令和8年度予算案ベースで5800億円に上ると説明し、「これが現役世代の過重な負担につながっている」と強調した。

この日出席した参考人は佐野顧問のほか、早稲田大教授の菊池馨実氏、日本難病・疾病団体協議会代表理事の大黒宏司氏、連合副事務局長の林鉄兵氏、全国保険医団体連合会理事・政策部部長の中村洋一氏。

佐野顧問は、OTC類似薬の薬剤費の一部を保険給付対象外にする一部保険外療養の創設について、医療費が年々増加する中、将来にわたり医療保険制度を維持するため、「保険給付範囲を見直すべき」と述べ、賛同する考えを示した。

その上で、円滑な導入に向け、▽配慮が必要な患者の範囲の適切な設定▽国民や患者、医師、薬剤師の理解を得るための周知広報の徹底──を求めた。

また、導入後の見直しとして、保険料負担への影響や患者の受診状況の変化の実態を検証するとともに、「さらなる保険給付の効率化、重点化への対応を検討してほしい」と要望した。

出産の給付体系の見直しに対しては、妊産婦の経済的負担の軽減と、適切にサービスを選択できる環境づくりが極めて重要だとした上で、「前提になるサービス内容、費用の見える化と、それに基づく標準化を確実に実施してほしい」と主張した。

新旧の給付が混在する移行期間については、妊産婦の不利益、不公平や保険者の過度な事務負担が生じないよう、時限措置として期限を区切り、可能な限り早期に移行するよう訴えた。

現物給付などの金額設定にあたっては、「医療保険財政と保険料負担への影響についても十分に考慮してほしい」と要望した。

一方、周産期医療体制の整備は、「国のインフラ整備に関する問題だ」として、新たな給付体系の導入とは切り離し、公費による支援も含め検討するよう求めた。

委員からは、高額療養費の自己負担の見直しより優先して取り組むべき対策について質問があった。

これに対し佐野顧問は、年々医療費が増えている実態を踏まえ、「高額療養費も含め、全体としてどのように見直しを進めるか」という考え方を強調した上で、保険給付範囲の見直しを含めた取り組みが不可欠だと応じた。

後期高齢者の現役並み所得者の給付費への公費投入に関する質問には、「現役並み所得者を増やすこと自体は、応能負担を促進するために進めるべきだが、そのために現役世代の負担が増える構造は、整合性に課題があると言わざるを得ない」と指摘し、早期の対応を訴えた。

菊池氏は医療保険制度の持続可能性を確保するためには、「限られた財源を真に必要な分野に重点的に配分し、給付と負担のバランスを社会経済の実態に即して調整することが重要だ」とした上で、「本法案はそうした方向性を具体化するものとして評価できる」と述べた。

OTC類似薬の見直しについては、「給付の重点化を進める上でやむを得ない」「一部保険外療養の形で別建てにすることに賛成だ」などと語った。具体的な対象医薬品の範囲や要配慮者の基準の検討にあたっては、「医学や薬学の専門家や患者などの意見を聞きながら進める枠組みを設定すべきだ」と強調した。

出産給付の見直しについては、「保険診療以外の分娩費用を保険者から医療機関に直接支給する方式にすることは、妊婦の経済的負担を確実に軽減するためにも適切だ」とした。一方、経過措置として認める現行の現金給付との併存については、「できるだけ早く解消できるよう、新制度の給付水準に優位性を持たせるなどの取り組みが求められる」と指摘した。

高額療養費の見直しに関しては、「年間上限の所得区分をさらに細分化するなど課題は残るが、負担のあり方をより精緻化し、制度の公平性と持続可能性を高める改革と位置づけられる」と評価した。

このほか、菊池氏は意見陳述の結びで、「直接かかわりを持つ当事者と、それ以外の非当事者を固定的かつ二項対立的に捉えず、その間に立つ『共事者』の視点が制度への理解と納得を形成する上で重要だ」と訴えた。患者団体や保険者、医療従事者など多様な関係者が参画した高額療養費見直しの専門委員会を例に挙げ、「今後もこうした取り組みを継続することを期待する」と述べた。

林氏は一部保険外療養の創設について、患者の負担増につながることから、国民や患者の理解を得るためのわかりやすい説明と、議論の透明性の確保を求めた。

出産に係る新たな給付体系の導入については、妊婦の自己負担が生じない仕組みにすることを評価する一方、移行期間は例外として扱い、期限を区切って対応するよう注文をつけた。

後期高齢者医療制度における金融所得の勘案は、確定申告の有無により負担が変わる不公平の解消が必要だとしながらも、システム改修などの実務面の対応は無理なく進めるよう求めた。

また、公平な負担の実現に向け、高齢者医療制度のあり方の検討や全世代の所得をより正確に把握する方法の確立など総合的な議論が必要だと主張した。

医療機関の業務効率化と勤務環境改善については、「人員確保や離職防止の観点からも、人員配置基準を緩和することなく、真に働く人の負担軽減に資する取り組みにしてほしい」と主張した。

協会けんぽへの国庫補助に関しては、協会けんぽの財政状況は近年安定しているものの、主に中小企業の労働者が加入していることから標準報酬月額の水準が高くないため、構造的な問題は変わっていないと指摘。国庫補助率の現状維持を求めた。

このほか、大黒氏は高額療養費について、さらなる慎重な制度設計を、中村氏は法案からの一部保険外療養の削除などをそれぞれ主張した。〈佐野雅宏顧問の意見陳述の要旨は次の通り。〉

持続可能な医療保険制度へ
現役世代の負担軽減不可欠

保険者の立場として、今回の法案に関する意見を述べる。

健保連の概況は、賃上げなどの効果で保険料収入が増えているが、やはり赤字の基調は変わっていない。依然として、全健保組合約1400のうち7割を超える組合が赤字だ。

高齢者医療への拠出金の負担が重く、今後も医療費の増加と現役世代の減少により、これまで以上に負担が増加することが見込まれている。

こうした中で、我々は持続可能な医療保険制度の実現に向けて、現役世代の保険料負担の軽減が不可欠だとこれまで申し上げてきたが、給付と負担のアンバランスの解消や負担能力に応じた負担、負担の公平性の確保、保険給付の適正化、重点化といった観点から、今回の法律案はまさに、この考えに沿っており、評価している。

法案について、具体的に2点申し上げる。

まず1点目は一部保険外療養の創設だ。これについては、やはり医療費の増大が大変厳しい中で、将来にわたって医療保険制度を維持するためには、保険給付範囲を見直すべきだというのが基本的な考え方だ。

その中で、OTC医薬品で対応している患者との公平性の確保、現役世代を中心とする保険料負担の上昇の抑制の観点から、一部保険外療養の措置には賛同するが、次のことを要望する。

まず1つ目は、円滑な導入に向けて、負担の公平性にも留意して、配慮が必要な患者の範囲を適切に設定すること。また、国民や患者、医師、薬剤師の理解を得るためにも、周知広報の徹底をお願いしたい。

もう1つは、今後の見直しに向けて、保険料負担への影響や、受診状況の変化について、実態を検証すること。加えて、さらなる保険給付の効率化、重点化についても対応を検討してほしい。

次に、出産の標準的な費用に係る給付体系の見直しについては、私自身もこの検討会に参加し、多くの関係者の意見を聞いてきた。その中で、我々の考え方を3つ申し上げる。

まず1つ目は、やはり現行の出産育児一時金による支援方法では限界がある中で、出産費用の見える化、透明性、公平性の担保、さらには適切な保険適用範囲の設定が必要だ。

また、昨今、大きな課題になっている周産期医療体制の整備について、重要性は強く認識しているが、出産費用の保険適用とは切り離し、別途解決策を考えるべきだ。

全体としては、やはり現役世代の保険料負担についての納得感を得ることも極めて重要だ。本法案の妊婦の経済的負担の軽減に向けて、もちろん新たな給付体系の導入には賛成だが、次の4つを要望する。

まず1つ目は、この制度の導入にあたり、妊婦の経済的負担の軽減や、サービスを選択できる環境づくりが極めて重要なので、前提となるサービス内容と費用の見える化と、これに基づく標準化を確実に実施してほしい。

また、分娩施設の体制維持、確保や産科医の確保、地域偏在の解消などの周産期医療体制の整備は、国のインフラ整備に関わる問題なので、出産の新たな給付体系の導入とは切り離し、公費による支援を含めて別途、解決策を検討してほしい。

3つ目は、新たな給付体系の導入により、妊産婦の選択に不利益や不公平が生じることのないよう、また保険者にとっても過度な事務負担が生じることのないよう、移行期間はあくまでも時限的なものとして、期限を区切って、できる限り速やかに新制度への移行をお願いしたい。

4つ目は、やはり分娩費、出産時、地域などの金額設定にあたっては、医療保険の財政や保険料負担への影響についても十分に考慮してほしい。

今後の制度改正
高齢者医療の見直し要望

以上、法案に関する意見を述べたが、せっかくこのような場をいただいたので、健保連が要望している制度見直しについても説明する。

持続可能な医療保険制度の実現に向けて、年齢にかかわらず負担能力に応じた負担を目指し、次の見直しをすべきだ。

1点目は高齢者医療の自己負担割合と年齢区分の見直し。2点目は後期高齢者の現役並み所得者の給付費への公費投入だ。

具体的には、高齢者の自己負担割合は現在、1割、2割、3割だが、可能な限り、負担能力のある人には負担してもらう観点から、年齢区分と負担割合の引き上げをお願いしたい。将来的には高齢者についても、やはり自己負担割合は3割を目指すべきだ。

また、1、2割負担の後期高齢者については、給付費に公費が50%投入されているが、現役並み所得の人は自己負担3割だが、給付費には公費が入っていない。本来公費が入るべきだと我々が考えている部分は、直近で5800億円という大変大きな金額になっており、これが現役世代の過重な負担につながっている。この2点について、ぜひとも早期に検討してほしい。

なお、この2点については、昨年末に厚労省が取りまとめた社会保障審議会医療保険部会の議論の整理でも取り上げられており、令和8年度中に具体的な制度設計を行い、順次実行するとされているので、ぜひとも実施に向けて、引き続き検討をお願いしたい。

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