健康コラム
賢い患者になろう〜電話医療相談の現場から〜 By COML vol.103
「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者中心の開かれた医療の実現を目指す市民グループ「COML(コムル)」が、読者からの電話医療相談に丁寧に答えていきます。
【相談担当】
NPO法人ささえあい医療人権センター
COML(コムル) 山口 育子
受け止められない現実、急かされる決断
相 談62歳の父が職場でひどい頭痛を訴えて倒れ、意識を失いました。すぐに救急車で病院に運ばれたのですが、脳幹出血と診断されました。ドクターから「脳幹は生命維持の中枢部分で、お父さんは大きなダメージを受けています。残念ながら意識を取り戻されることはないでしょう。運ばれてきてすぐに人工呼吸器を装着しましたが、それを継続するのは1カ月をめどと考えてください」と言われました。私(息子)は母と妹に相談し、可能な限り人工呼吸器をつけてもらうことにしました。まだ若い父の死を受け入れることはできませんし、たとえ意識が戻らなくても生きていてくれるだけでいい、もしかしたら奇跡が起きるかもしれないと考えたからです。
ところが、入院から2週間経った昨日、担当の若いドクターが病室にやってきて、「ご家族での話し合いは進んでいますか? いつごろ外す結論を出されますか?」と、“外す”ことを前提に聞いてくるのです。私たちの父に対する気持ちをまるで理解しようとしない態度に、腹が立って仕方ありませんでした。ドクターが助からないと判断すれば、生命維持を望むことは許されないのでしょうか。いまさら転院するわけにもいかず悩んでいます。
コメント山口育子(COML)
病気がわかって徐々に進行するのと違い、脳内出血はある日突然発症するだけに、「もう助からない」現実を突きつけられても、家族として簡単に受け止めることは難しいと思います。まして、まだ62歳という若さを考えると、なおさらでしょう。現実を受け止め、冷静に今後のことについて判断するにはある程度の時間が必要だと思います。
ご相談をお聴きしていると、救急搬送された段階からご家族はドクターの説明を一方的に受けるばかりで、家族で話し合った想いも伝えられていないことがわかりました。それに、今後いまの状態が続くとどうなるのかも、十分理解できていないようでした。そこで、病棟のナースや医療ソーシャルワーカーなどに、まずはいまの家族の考えや想い、今後の希望を伝えたうえで、他職種を交えてドクターと話し合いの場を設けてもらうように依頼してはどうかとお伝えしました。
NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)
「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者中心の開かれた医療の実現を目指す市民グループ
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