健康コラム
賢い患者になろう〜患者の悩み相談室〜 By COML vol.10
「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者中心の開かれた医療の実現を目指す市民グループ「COML(コムル)」が、読者からの電話医療相談に丁寧に答えていきます。
【相談担当】
NPO法人ささえあい医療人権センター
COML(コムル) 山口 育子
医療事故の報告について
相 談3カ月前、62歳の夫に胃がんがみつかりました。術前の説明で、「検査の結果、進行がんと思われますが、恐らく転移していてもリンパ節止まりでしょう。膵臓に転移があると拡大手術になりますが、そうならない確率は7割と考えています」と言われ、拡大手術になった場合の説明はないままでした。ところが手術中に「膵臓への浸潤(侵入していること)が見られたので、拡大手術になりました」と手術室から伝えるために出てきた若手医師から告げられました。
手術は成功したそうなのですが、術後2日目に縫合した部分から膵液が漏れ出し、血管を溶かして大出血してしまったのです。その結果、あっと言う間に夫は亡くなってしまいました。
可能性が低いという拡大手術になった上に、大出血を起こして死亡するなんて、予想だにしていませんでした。夫は自営業だったので、仕事の整理もできないままです。担当医は「残念な結果になってしまいましたが、縫合不全は手術の合併症なので……」と言葉を濁すばかりで、納得のいく説明が得られないままです。せめて何が起きたのか、きちんとした説明をしてもらいたいのですが。
コメント山口育子(COML)
拡大手術にならない可能性は7割ということは、逆にいえばなる可能性は3割です。医療で安定した検査や治療のリスクは0.1%以下と聞きますから、3割は高い割合だと思います。ましてや手術が膵臓に及んだ場合は、格段に重い合併症の可能性が高まるだけに、拡大手術になった場合の説明も事前に行われる必要があったのではないかと思います。
また、この方の死は「医療に起因した」「予期せぬ」死亡ですから、2015年10月から始まった医療事故調査制度の対象となる可能性が高いと思います。対象となる場合、医療事故調査・支援センターに死亡の報告がなされ、原則外部委員を入れた院内調査を行って、結果は遺族にも報告されます。この場合の医療事故とは医療過誤とイコールではなく、予期せぬ死亡という有害事象が起きた場合の制度です。そのため、報告の対象ではないかと病院やセンターに相談してみてはどうでしょう。
NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)
「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者中心の開かれた医療の実現を目指す市民グループ
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