健康コラム
賢い患者になろう〜患者の悩み相談室〜 By COML vol.29
「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者中心の開かれた医療の実現を目指す市民グループ「COML(コムル)」が、読者からの電話医療相談に丁寧に答えていきます。
【相談担当】
NPO法人ささえあい医療人権センター
COML(コムル) 山口 育子
院内調査への協力に不安がある
相 談半年前、夫(58歳)に胆石が見つかり、腹腔鏡による手術を受けることになりました。手術は2回に分けて行い、1回目が胆石を取り出す手術、2回目が胆のうを摘出する手術の予定でした。1回目の手術のとき、夫は「2〜3日で退院できそうだから、気軽に受けてくるよ」と言って入院しました。
ところが、その手術の途中で十二指腸に穴が開く「穿孔」が起きたと聞かされました。ただ、医師からは「CTで確認したら出血はおさまっているし、想定範囲の合併症です。しばらく経過を見ます」と言われたので安心していました。しかし、その2日後、病院から電話があり「腎機能が低下してきたので大きな病院に搬送します」と言われたのです。
転院先ですぐに手術となったのですが、身体中に胆汁が溜まっている状態だったらしく、緊急手術の5日後に亡くなってしまったのです。腹腔鏡手術を行った病院からは「医療事故調査・支援センターに報告して院内調査をします。そのため転院先のカルテや解剖報告書などを取り寄せることにご協力いただきたい」と言われました。これは病院がミスを認めたということでしょうか。ミスをした病院に転院先のカルテを見せるなんて、自分たちのいいようにするために利用されるのではないかと不安です。
コメント山口育子(COML)
2015年10月から始まった「医療事故調査制度」では、医療に起因し死亡することが予期できなかったときは、医療事故調査・支援センターに報告し、速やかに院内調査を行うことと定められています。「医療事故」という名称から医療ミスをイメージする人も多いと思うのですが、過誤の有無を問うたり、誰かを罰したり、犯人捜しをしたりする制度でもありません。医療において、予期せぬ死亡は起きる可能性があるので、その原因を調べて再発防止を図る方策を考え、医療安全の質を高めることが目的なのです。
院内調査をより精度の高いものにするためには、転院先の緊急手術の情報や解剖報告書は大切な情報です。調査結果はご遺族にも報告されますので、より詳しい結果を知るためにも協力は承諾された方がいいと思います。
NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)
「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者中心の開かれた医療の実現を目指す市民グループ
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