健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.109
NPO法人パオッコ理事長の太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
【コラム執筆】
NPO法人パオッコ
~離れて暮らす親のケアを考える会~
理事長 太田差惠子
「知らせないで」は親の気遣い
親の多くは「子どもに心配をかけたくない」と考えています。そのせいか、具合が悪くなっても「遠方で暮らす〇〇には知らせないでおこう」と思うことがあるようです。遠くから駆け付けるには、時間とお金が必要になりますから……。
Mさん(女性40代)の実家は車で1時間ほどの隣県です。70代の両親が2人暮らし。昨年、父親が体調を崩したので病院に連れて行ったところ、初期の胃がんが見つかりました。Mさんには東京で暮らす兄がいます。すぐに病気のことを知らせようとしたのですが、母親から「言わないで」とくぎを刺されてしまいました。
確かに、コロナの影響により、知らせても兄が病院で父親に面会することはかなわないかもしれません。落ち着いてから話せばいいと考える両親の気持ちも分かります。けれども、手術にはリスクがあります。「急変」なんて事態も起こりかねません。
「お母さんが『知らせるな』と言っているけれど、知らせておくね」と連絡をする方がいいのではないでしょうか。駆け付けるかどうかの判断は兄に任せて。後から、「なぜ、知らせてこなかった」と叱られるのは割に合いません。それに、高齢の親の場合、体力の低下などから退院後に介護が必要になるケースも考えられます。知らせなければ、退院後の生活について兄に相談することもできないでしょう。
自分が見舞いに行ける状況なら、遠方のきょうだいには、自分のスマホを使ってオンライン面会してもらうのも一案です。