健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.127
NPO法人パオッコ理事長の太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
【コラム執筆】
NPO法人パオッコ
~離れて暮らす親のケアを考える会~
理事長 太田差惠子
特養の負担額が想定より高い!
親が身の回りのことを自分でできなくなると、施設入居について考え始める人が多いと思います。要介護3以上だと、特別養護老人ホーム(特養)も選択肢となります。
Tさん(男性50代)の母親は要介護4で、実家で独居。1人でトイレに行けなくなり、最近、本人から「特養に入ろうと思う」と言い始めたそうです。
特養などの介護保険施設に入るとき、住民税非課税世帯だと、食費と居住費が軽減されます。Tさんの母親の場合、年収は80万円以下なので、通常1日1445円の食費は390円に、通常1日2006円の居住費は820円(ユニット型個室)となり、合わせると月7万円近く減額されるはずでした。
ところが、役所に相談に行くと、年金額が少なくても、一定額以上の資産があると減額されないことが判明。母親の口座には父親の残した800万円ほどが入っています。残高が650万円より少なくなるまでは、軽減されず通常の支払いになるとのことでした。
実は、Tさんは、「同居できないから、せめて」との気持ちで、母親にかかる介護費用を負担してきました。「母親のお金で払っていれば、今頃、母の通帳残高は650万円以下になっていたはず。要らないことをした」とうなだれます。
特養の負担軽減は、在宅で暮らす高齢者との公平性、増大する社会保障費の観点などにより縮小の方向に進んでいます。資産要件がさらに厳しくなることもあるでしょう。思わぬ影響を避けるためにも、普段から、本人のために使う費用は本人のお金で賄う方が良いと思います。