健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.130
NPO法人パオッコ理事長の太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
【コラム執筆】
NPO法人パオッコ
~離れて暮らす親のケアを考える会~
理事長 太田差惠子
「運転」を諦めてほしい
75歳以上の3人に1人が運転免許を持っている時代です。池袋の高齢運転手(当時87歳)の暴走事故や、福島県での97歳が起こした事故では、どちらも尊い命が奪われました。報道を見ながら、自分の親に思いをはせ、心配している人は多いのではないでしょうか。
Kさん(女性60代)の両親は、山陰地方の実家で2人暮らし。もうすぐ90歳です。両親ともに、介護保険の認定は要支援2。Kさんは両親に対し、介護保険のサービスを利用することを勧めていますが、「必要ない」と拒否します。その上、通院や買い物には父親の運転で出掛けます。「運転してほしくないのですが、父は聞く耳を持たない。年を取るほど意固地になる。免許証を取り上げれば、通院や買い物への〝足〟を奪うことになり強く言えません」とKさんはため息をつきました。
Kさんに限らず、多くの子が心身の弱ってきた老親に運転をやめてもらおうと悪戦苦闘。成功例で多いのは、かかりつけ医を味方につける方法です。子の言葉に耳を傾けない親も、医師の言葉には従う傾向があります。そこで、お願いして、医師から親に「そろそろ運転を控えよう」と言ってもらうのです。
善しあしは別として、強硬手段で成功した人もいます。知人から「車の壊し方」を教えてもらい、実家の車の「破壊に成功した」と言っていました(笑)。
妙案はありませんが、運転をやめた際の生活の足について共に考えることも重要でしょう。0か100かではなく、まずは「夜間は運転しない。日中も慣れた道のみ」など、少しずつ運転する幅を狭めるよう提案するのも一案です。