健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.14
NPO法人パオッコ理事長の太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
【コラム執筆】
NPO法人パオッコ
~離れて暮らす親のケアを考える会~
理事長 太田差惠子
いくらかかるかではなく「いくらかけるか」
この先、離れて暮らす親に介護が必要となったら、いったいいくらお金がかかるんだろう…。子にとって、大きな心配ごとです。まだ住宅ローンが残っている人もいるでしょう。教育費の捻出で精一杯、という家庭もあり、自分たちの老後資金への不安も重なります。
しかし、その額は、どんな介護をするかで大幅に変わるため金額を提示することはできません。極端な話、親が「近所にできたホテルのような有料老人ホームに入りたい」と言えば、それなりの費用がかかります。その資金はあるでしょうか。親は持っていますか。
介護のお金はいくらかかるか、ではなくいくらかけるか。別の言い方をすれば、いくらならかけられるか。
先日、母親を看取ったTさん(50代・女性)。介護のために3年前にパートを辞めました。母親が介護サービスにお金をかけることを「もったいない」と渋ったためです。「それなら私がやろうと思ったのですが、一時の感情でパートを辞めたのは早計でした。私の収入がなくなり家計がひっ迫しています。しかもかなり交通費がかかりました」。介護費用の支払いは抑えられたものの、Tさんの年間約100万円の収入が消えたわけです。3年で300万円。年齢的にパートの再開が難しい現状を考えると、その額はさらに大きくなります。交通費は3年で60万円だったとか。
目先の支払いにとらわれるのではなく、介護資金は長い目でプランすることが重要です。本人の年金、貯蓄はいくらあるのか。自分たちはいくらなら支援できるのか。そこから導き出す額が介護にかけられる金額です。