健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.144
介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
子育て中に親が認知症を発症
育児と介護が同じ時期に重なることを「ダブルケア」と呼びます。結婚する年齢や出産する年齢が上がっていることが背景にあるようです。
Sさん(女性40歳)の両親(70代)は電車で30分ほどの実家で暮らしています。Sさんは夫婦共働き。「長女を出産したのは38歳のときです。仕事を頑張りたい気持ちもあって、妊活は35歳から。すぐには授からず高齢出産となりました」とSさん。現在、Sさんは育児休業を経て職場に復帰しています。
実は昨年、実家にいる父親が認知症と診断されました。「もともとは両親には育児のサポートを期待していましたが、それどころではなくなりました」とSさんは話します。
Sさん夫婦は土日が休日。長女の機嫌が良いと、夫に育児を託して実家に様子を見に行きます。また、Sさんの父親は、火曜日と土曜日にデイサービスに通っているので、月に1回、土曜日に母親をランチに誘うそうです。互いに、育児と介護から解放されてひと休み。
一度、母親が高熱を出した時は、父親にはショートステイで施設に1週間宿泊してもらいました。
「父には悪いけれど、母の身体を第一優先。それと、母と私にとって『息抜き』は欠かせないミッションと考えています」とSさんはにっこり。父親の認知症が進めば、施設に入ってもらうことも母親と話し合っているそうです。
育児であれ、介護であれ、そしてダブルケアであれ、乗り切るコツは頑張り過ぎないこと。制度やサービスをトコトン活用し、「なるようにしかならない」と開き直ることも必要だと思います。