HOME > 健康コラム > ほっとひと息、こころにビタミン バックナンバー > ほっとひと息、こころにビタミン vol.5

ほっとひと息、こころにビタミン vol.5

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

思い通りにいかないとき

8月は夏休みです。学童期の子どもがいる家庭では、それまで学校に通っていた子どもが家庭にいることが多くなります。一緒にいる時間が長くなると、今まで気にかけなかった子どもの行動が気になってきます。宿題をしないで遊んでばかりだ、すぐに癇癪を起こす、集中力が続かないようだ、さまざまなことが不安になってきます。

そのため、つい厳しく言い過ぎてしまうこともあります。それに対して子どもが反発するような態度を取ると、そのような態度を取るような育て方をしてしまったのではないかと考えて、親が自分を責めるようになったりすることもあります。そうしたときは、子どもとの距離が近くなり過ぎて、冷静に現実を見ることができなくなっています。

子どもは、そうした環境を感じ取って、今まで以上に問題と思える行動を取ることが多くなってきます。環境に敏感に反応してしまうのです。私たちの行動は、環境に反応して変化します。とくに子どもの行動はその傾向が強くなります。

ですから、子どもの行動を変えるためには、言葉であれこれ指示するのではなく、期待する行動を取るような環境を作ることが大事です。そもそも、親と子どもはまったく別の人間です。親がいくら心配して声をかけても、子どもが納得できなければ、親が期待するように行動することはありません。その行動まで変えさせようとすると、子どもは自分が否定されたように感じて反発するでしょう。

親子関係に限ったことではありませんが、相手から期待する行動を引き出すためには、それが自然にできるような雰囲気や言い方を大切にするようにしましょう。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

バックナンバー