ほっとひと息、こころにビタミン vol.23
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
6秒ルールを意識しましょう
この時期、年末年始の休みのために仕事がたまったり、年度末までに片付けないといけない仕事に追われたりして、気持ちが休まらない人も少なくありません。そのように忙しいと、ついイライラして人に当たったり、一方的に無理な要求をしたりして、後で後悔することになります。
そうしたときには、「6秒ルール」を意識することが役に立ちます。「6秒ルール」というのは、腹立たしい気持ちが強くなったときに、6秒間だけ、その気持ちを表に出さないように我慢することです。腹が立ってきつい言い方をしたくなったら、こころの中でゆっくりと1から6まで数を数えてもいいでしょう。
怒りの気持ちは、海岸に打ち寄せる波のようなもので、一時的に高まっても自然に収まってきます。怒りというのは、相手が自分の期待に応えてくれなかったときに出てくる感情です。
その裏には、こうしてほしいという期待が隠れていて、その期待が裏切られたために、何とかしなくてはと考えて「怒り」というこころのエネルギーが高まります。ですから、そのエネルギーを使って期待する方向に進んでいくことが大事です。感情に任せて思いっきり感情をぶつけてしまうと、そうした現実から遠ざかるばかりです。
そのようにならないためには、「6秒ルール」を使った後に、どのような言い方で何を相手に伝えると自分の期待が実現する可能性が高いか、その戦略を考えてみるようにします。その内容を一度こころの中で練習してみてから、落ち着いてそれを口に出すようにしてみてください。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。