ほっとひと息、こころにビタミン vol.25
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
コミュニケーションのコツ
新年度が始まりました。人事異動などをきっかけに新しい職場環境で働くことになったり、慣れない仕事に取り組むことになったりした人も多いのではないでしょうか。そうしたとき、仕事でよく分からないことがあっても気軽に尋ねることができないために、思うように仕事が進まず、自信を無くしてしまうことが少なくありません。そうすると、他の人たちが自分だけに厳しい目を向けているように感じて、ますます気持ちが内向きになってきます。
こうした傾向は、人間関係に苦手意識を持っている人に特に強く見られるのですが、そうした人に話を聞くと、分からないことがあっても「こんな簡単なことも分からないダメな人間と思われるのではないか」「みんな忙しそうにしているのに、こんなことを聞いて時間を取るのは申し訳ない」などと考えて、声を掛けるのをためらっていることがよくあります。
しかし、冷静に考えると、質問せずに仕事が進まない方がダメな人間だと思われたり、周りの人たちに迷惑を掛けたりする可能性が高くなります。ですから、信頼できそうな人にまず聞いてみることが大事になります。
そのときには、感情的になりすぎたり、事務的になりすぎたりしないようにすることを意識すると良いでしょう。仕事をさえぎることになって申し訳ないという自分の気持ちと、どこが分からないのかという具体的な事実をバランス良く伝えるように意識します。そうすると、スムーズに話が進むことが多くなります。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。