ほっとひと息、こころにビタミン vol.31
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
運動でこころを元気に
暑い夏が終わり、スポーツの秋がやってきました。しかし、今年は、新型コロナウイルスに感染するのが心配で、外でスポーツをするのをためらっている人がいるかもしれません。そのように心配になる気持ちは分かるのですが、あまり家の中に閉じこもってばかりだと、こころの元気がなくなってくることがあるので注意が必要です。
毎日の生活で、楽しいことややりがいのあることが減ってくると、うつ的になりやすいことが分かっています。もちろん、家の中で読書をしたり、音楽を聴いたり、映画を楽しんだりするのも、こころの健康のためには役に立ちます。しかし、本来活動的な人が家の中に閉じこもって考え込んでいることが多くなると、精神的にストレスがたまりやすくなります。そうしたときには外に出て、人との距離を保ちながら、体を動かすようにすると良いでしょう。
体を動かすと、こころが元気になることは、これまでもいろいろな研究で実証されてきています。なぜこころが元気になるのか、その理由ははっきりとはしないのですが、体を動かすこと自体が気分転換になるのかもしれません。スポーツを通して他の人たちと交流できることで、気持ちが晴れる可能性もあります。そうした心理的な要因だけでなく、体を動かすと、脳内の快感ホルモンであるエンドルフィンが増えるのではないかとも考えられています。
理由はどうであれ、運動をすることで気持ちが軽くなることは確かです。自分の好きな運動で良いので、感染防止には気を配りながら、できるだけ体を動かすようにすることをお勧めします。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。