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ほっとひと息、こころにビタミン vol.75

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

若者のオーバードーズ 悩みへの対応が不可欠

最近、若い年代を中心に、大量の薬を摂取する「オーバードーズ」が話題になっています。私たち精神科医はオーバードーズという言葉を、うつ病や不安症、不眠症などの精神疾患の治療のために処方された薬を大量に服用するようになった状態に使っていました。精神的に追いつめられてしまい、そこから逃げたいと考えて、精神疾患の治療薬を大量に服用するのです。

しかし、最近の若者のオーバードーズは、薬局やドラッグストアで購入できる風邪薬や咳止めなどの市販薬を大量・頻回に服用する状態を指して使われています。こうしたことをする若者は非行歴が少なく、女性が多いとされていますが、誰でもこのような状態になる可能性があります。

また、治療薬を大量に服用する人と同じように、学校や家庭でつらい気持ちになって追いつめられ、そこから逃げたいと考えて市販薬を飲んでいることが分かっています。もちろん、治療薬でも市販薬でも、大量・頻回に服薬すると心身に不調が出てきます。

こうした状態への対策としては、若い人たちが悩みに上手に対処できるようにいろいろな場面で教育することや、自分一人で対処できないときには安心して相談できる仕組み作りが大切になります。また、オーバードーズに気付いたり、そうした人から相談を受けたりしたときには、よく話を聞いて、悩みが少しでも軽くなるように一緒に問題に取り組んでいくようにします。

すぐに問題が解決しないかもしれませんが、話を聞いてもらえる人がいると分かるだけでもそうした人の気持ちは軽くなりますので、辛抱強く取り組むようにしてください。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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