ほっとひと息、こころにビタミン vol.85
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
こころの声に目を向ける
動揺した気持ちを落ち着けるためには、そのときにこころの中で自分に投げかけている声に目を向けると良いと考えられています。そうしたこころの声を、私が専門にしている認知行動療法では「自動思考」と呼んで大切にしています。自動思考が大事なのは、気持ちが動揺しているときには、問題を現実以上に、大きく捉えすぎていることがよくあるからです。
気になる出来事が起きたときに良くない可能性を考えること自体は、悪いことではありません。「危ない」「大変だ」「ひどい」と良くない可能性を考えて、まずは自分の身を守る必要があるからです。通常は、その後、冷静になって考え直せるのですが、何らかの理由で、それができなくなることがあります。そうするとストレスがたまってきて、こころや体の調子が悪くなってきます。
そうした心身の変調に気付いたときには、ちょっと立ち止まって、自分が置かれている状況を振り返るようにしてみてください。そのときの自分の考えを裏付ける事実にどのようなものがあるか、反対の事実にどのようなものがあるか、見直してみるのです。そうすれば、何が問題かが見えてきて、冷静に対処できるようになってきます。
しかし、自動思考を振り返るのが良いと分かっていても、簡単にできないこともあります。そのときには、そうした作業を頭の中だけでなく、紙に書き出してみてもう1人の自分が自分に意見をするようにしてみてください。紙に考えを書き出すことで、客観的に自分を眺められるようになります。もちろん、1人で頑張りすぎずに、信頼できる人に相談することも大事です。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる!うつの人が見ている世界』(池田書店)など。