健康コラム
ほっとひと息、こころにビタミン vol.97

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
全体を俯瞰(ふかん)し、上手にこころのバランスを
今回は、ワークライフバランスについて考えます。後輩の医師たちと話していたときのことです。後輩といっても、病院で責任を持つ立場の人たちなのですが、最近の若い医師は一定の時間が来ると帰っていく人が多いそうです。
「自分たちの若い頃には、勉強だと思って先輩医師の仕事を引き受けて時間外も残って仕事をしていた。そして今は、若い医師のやり残した仕事を時間外に残ってやっている。いつまでたっても遅くまで働いているね」と言って、皆で笑っていました。
このように笑えるうちは、まだ良いでしょう。自分の勉強のため、患者さんのためにと考えやりがいを感じられているときには、無理も悪くありません。一方で、早く帰って自分の時間を自分のために使うのも良いでしょう。リフレッシュして、翌日の仕事に集中できるようになります。これは、どのような職業でも同じです。
しかし、働き過ぎて疲れ果ててしまうこともあります。集中力が落ちてきて、些細(ささい)なミスが重なったりするようになると要注意です。一方で、自分の時間を大切にすることばかり考えて、仕事に支障が出てきたり、人間関係に問題が出てきたりするようになると、これもまた問題です。上手にバランスを取ることが大事です。
私たちは、ともすると目の前のことにこころを奪われてしまって、全体が見えなくなりがちです。そのときに、ちょっと引いて全体を俯瞰することが大事で、そのことを伝えているのが「ワークライフバランス」という言葉だと、私は考えています。新年度が始まった今、ちょっとご自分の状況を振り返ってみてください。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる!うつの人が見ている世界』(池田書店)など。