健康コラム
企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~
昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。
企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~
テルモ株式会社
禁煙を軸に取り組む健康経営
テルモグループは「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、医療の発展とともに歩み続けてきました。従来から社員の健康を重視しており、他社のお手本になるような健康経営を目指し、さまざまな健康増進活動を展開しています。特に、禁煙対策には徹底的に取り組み、就業時間内禁煙や敷地内全面禁煙を実施。これらの取り組みについて、テルモ株式会社人事部長兼テルモ健康保険組合理事長の竹田敬治さん、テルモ健康保険組合常務理事の大関弘愛さん、事務長の門井ゆかりさんに話を伺いました。
【テルモ株式会社】
設 立:1921年9月
本 社:東京都渋谷区幡ヶ谷2-44-1
従業員数:24,508名(グループ計 / 2018年9月30日現在)
【テルモ健康保険組合概要】
加入事業所数:7事業所(2018年9月現在)
加入者数:12,476名 ※被扶養者6,464名含む
──社員の健康づくりに取り組むきっかけや背景をお聞かせください。
テルモ株式会社
人事部長兼テルモ健康保険組合理事長
竹田 敬治 さん
テルモは創業以来「医療を通じて社会に貢献する」を企業理念に活動し、医療の発展とともに組織を進化させてきました。従来から社員の健康を重視しており、健保組合と協力し、社員とその家族の健康を守るために地道な活動を続けてきました。
また、テルモグループはこの5~10年間、事業規模が急激に拡大しており、社員の数も増加しました。そのため、大きくなった組織の足元を固めるためには、社員とその家族の健康維持・増進が非常に重要だと考えています。経営者も健康経営の重要性を認識しており、社員に向けてメッセージを発信しています。
──具体的にはどのような取り組みを行っていますか。
グループ横断的な「テルモ健康経営推進チーム」が中心となって、▽喫煙率、メタボ率(※)の低減▽がん対策▽ウィメンズヘルス▽社員の自発的な取り組みの奨励――の4つを柱に健康経営を推進しています。
特に、たばこに関しては就業時間内禁煙や禁煙外来受診費用補助など、積極的に取り組んでいます。2016年には敷地内全面禁煙を実施し、社員のみならず敷地に出入りする派遣社員や請負業者様などにも遵守していただいています。たばこは喫煙者自身にとっても周囲の人にとっても健康への影響が大きいことから、社員・家族に理解を求め、徹底的に喫煙率の低減に取り組んでいます。
また、今年度から歯科検診とあわせて体力測定を始めました。測定結果は体力年齢として示されるようになっています。具体的な数字を見せると、より危機感を持ってもらえます。また、各種イベントと組み合わせることで受診率の向上にもつながりました。
※メタボ率は特定健診の対象者に占めるメタボリックシンドローム診断基準の「基準該当」と「予備群」の合計人数
──健康経営銘柄の選定、健康経営優良法人(ホワイト500)の認定についてお聞かせください。
これまで続けてきた地道な取り組みが評価されたということだと思います。
大切なのは、最後まで健康づくりへの取り組みを継続することではないでしょうか。そのためには、社員が活動を維持・継続できる仕組みを作ることも必要です。最初は毎年の健康診断がゴールでも構わない。健診後に1人でも多くの社員が健康づくりへの取り組みを継続して、習慣化してくれれば良いと考えています。
──情報の発信はどのようにされていますか。また、社員の皆さんの反応はいかがですか。
テルモ健康保険組合
常務理事 大関 弘愛 さん
各事業所での健康づくりへの取り組みは、イントラネット等の社内報で紹介しています。好事例を積極的に展開することで、各事業所の担当者が刺激を受け、より良い取り組みを企画しようと努力しています。
また、イベントの様子はサステナビリティレポートや会社のホームページを通じて社外に向けても発信しています。健康経営銘柄の選定や健康経営優良法人の認定を含め、会社の健康づくりへの取り組みには社員のみならず社外の人も注目しているようです。特に就職活動中の学生は、会社の福利厚生や社員の処遇、ダイバーシティ(多様性)への関心が高いと感じます。
──事業主と健保組合の役割分担や協力体制はどのようにされていますか。
健保組合のメリットは社員の扶養家族にアプローチできる点です。そのため、健康経営を推進する上で会社と健保組合の連携は欠かせません。テルモグループでは、健康増進のイベントを社員の家族に向けても開催しています。
社員にとっては、家族からの一言が行動変容につながることがあるようです。40年来の愛煙家だったある役員は、イベントに参加したお孫さんから禁煙を促す手紙をもらい、すぐに禁煙しました。さらに、自ら各事業所に赴き社員に禁煙を促してくれました。家族へのアプローチもトップダウンの禁煙推進と社員の健康意識の底上げにつながり、大きな効果があったと思います。
──KENKO企業会立ち上げの経緯について教えてください。
テルモ健康保険組合
事務長 門井 ゆかり さん
健康づくりの「横の連携」を作ることを目指して、14の会社が集まって「KENKO企業会」を設立しました。手弁当で自分たちの知恵や経験を持ち寄ることで、より「横の連携」が深まっていると感じます。また、会社の壁を越えて共同で開催するイベントも、相互に刺激し合うことで活動力が増し、上位の成績を収めた際の景品も自社製品などを含め各社で持ち寄ります。
入会の条件は▽経営のトップがコミットすること▽商売抜きで参加すること――の2つです。社員の健康増進という目的の下に集まった会社は、現在約60社に上りました。
会員の増加に伴い、現在はテーマごとの分科会形式で情報交換や研究を進めています。ウェブ会議を開催するなど、運営方法に工夫を凝らしているチームもあるようです。年に1回、全体会合である経営者会を開催し、活動の成果を報告しています。
──今後の展望をお聞かせください。
なんと言っても特定保健指導が課題です。指導対象者の意識が低く、まだまだ実施率が低いです。メタボ率も思うように下がっていません。40歳代は働き盛りの世代なので、彼らが健康でないと会社の経営にも悪影響を与えかねません。今後の取り組みには、多少の強制力が必要と考えています。会社の人事担当と協力して、特定保健指導の実施率向上を目指します。
テルモは法定健診の受診率100%を維持することに加え、二次検診の受診率100%を目指しています。そこで、二次検診の受診対象者は業務命令として就業時間内に受診し、受診しない場合、人事担当が直接アナウンスして受診を促しています。時には対象者の上司にもアプローチするなど、重点課題として取り組んできました。その結果、二次検診の受診率は9割程度に伸びました。
また、各事業所の特性に合わせた健康増進の取り組みも必要です。本社、営業所、工場など事業所により日頃の活動量が大きく異なるので、一律の取り組みには限界があります。やはり、大切なのは社員一人ひとりの健康意識を高めることと、各事業所が積極的に健康増進に取り組み続けることです。そのために、セミナーなどの地道な啓発活動に加え、無理なく続けられる取り組みを企画していきたいと思います。
テルモ株式会社 人事部長兼テルモ健康保険組合理事長 竹田 敬治 さん
「テルモは医療機器を販売しています。自分たちの商品にお世話になるわけにはいきませんね」
テルモ健康保険組合 常務理事 大関 弘愛 さん
「喫煙率は順調に下がっています。メタボ率低減を実現するためにも、特定保健指導の実施率向上を目指します」
テルモ健康保険組合 事務長 門井 ゆかり さん
「社員の健康意識を向上させるには、社員が自主的に参加できるイベントを企画する必要があります」