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健康コラム

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

岡本無線電機株式会社

Society5.0社会貢献や人生100年時代に向けて健康経営を推進

電子部品・機器の総合商社である岡本無線電機株式会社。2019年8月の「健康宣言」の策定を契機に、「健康診断と保健指導の受診」「メンタルヘルスケアの充実」「時間外労働の抑制」「快適な職場環境つくり」「社員の生活習慣の改善」を柱に掲げ、加入する近畿電子産業健康保険組合と連携して健康経営を推進し、21年3月には「健康経営優良法人」(大規模法人部門)に認定された。同社の健康経営の取り組みなどについて、代表取締役会長・岡本弘さん、代表取締役社長・岡本崇義さん、執行役員総務本部長・小松司さん、健康経営推進委員会(グループ会社全体の健康経営を推進するための事務局)・架場進さんならびに近畿電子産業健康保険組合の専務理事・山川孝司さん、常務理事の齋藤武延さんに話を聞いた。

【岡本無線電機株式会社】
創 業: 1940年9月15日
本 社: 大阪府大阪市浪速区日本橋4丁目8番4号
代表取締役会長:岡本 弘
代表取締役社長:岡本崇義
従業員数:465人
(2021年4月現在)
2019年8月に「健康企業宣言」

──生涯現役を目指し健康経営に取り組み


岡本無線電機株式会社
代表取締役会長
岡本 弘 さん

岡本(弘)さん ▶

 近畿電子産業健康保険組合の理事長として、健康について勉強する機会が多くあります。企業経営は社員が健康でないと成り立ちませんし、企業が発展するためには、社員が健康でなければ仕事においても十分な力を発揮していただけません。社員の健康を意識して経営する、社員も健康に対する意識を持って励んでいただくことが大事です。

 さらには、いくら長生きをしても不健康ではつまらない人生になります。社員のみならず、定年を迎え会社を離れた人も健康で長生きしてもらうための準備が必要だと感じ、健康経営に取り組むことにしました。

岡本(崇)さん ▶

 人生100年時代や生涯現役といわれ、定年も65歳、70歳という流れの中で、働く年数も長くなっています。健康でなければ自身の心身の充実も含めて難しいですし、企業の発展という意味でも、社員の健康があってこそよりよいものが作られていくと思っています。


岡本無線電機株式会社
代表取締役社長
岡本 崇義 さん

 当社はSociety5.0(※)社会に貢献することをビジョンに掲げています。将来に向けてわれわれとしてどうあるべきかを考えたときに、そのベースとして健康が重要であると考えています

小松さん ▶

 2019年から健康経営の具体的な取り組みを開始しました。生涯現役に主眼を置いて健康経営を考えるという宣言の下、まずは就業規則を見直しました。当社は60歳定年なのですが、再雇用で60歳以降の働き方の多様化を進めています。そのベースとして会社が期待しているのは、若い時から人生100年時代というコンセプトを目指し、健康を意識した生き方をして欲しいということです。

 また、昨年度から今年度の取り組みでは、新型コロナ対策が大きなウエートを占めました。基本的な感染対策の徹底のほか、事務所スペースの分散、リモート会議等の環境整備のための設備投資も行ってきました。


岡本無線電機株式会社
執行役員総務本部長
小松 司 さん

 他方、こうした環境下であるため、社員も多くの苦労やストレスを抱えている状況があると思い、ストレスチェックを実施しました。その上で人事部門が中心となり、社員一人ひとりと面談を実施し、心理面や悩みを聴取しています。

架場さん ▶

 会長から健康経営への取り組みの指示を受け、他社の事例等を情報収集しながら検討を進め、健康宣言をまとめました。健康経営の目的として、▽健康診断と保健指導の受診▽メンタルヘルスケアの充実▽時間外労働の抑制▽快適な職場環境つくり▽社員の生活習慣の改善―を柱に掲げました。

 健康経営を推進するに当たり、全社員の状況を把握する必要があったため、社内意識アンケートを実施しました。アンケート結果を踏まえ、健診受診率の向上、喫煙率の減少、運動習慣の改善を中心に取り組んできました。この結果、例えば禁煙率は毎年2%ずつ減少し、21年度は19%になりました。


岡本無線電機株式会社
健康経営推進委員会
架場 進 さん

 健康経営に実際に取り組むに当たっては、年間のスケジュール作成や前年度の健康活動実績を踏まえ、当該年度の定量・定性的な目標を定めています。その上で、国内にある各営業所に配置している厚生委員にも活動内容や情報を発信し、営業所内に広める取り組みを行っています。今年度の活動では、ウオーキングの参加者数も増加するなど、成果が出てきています。

山川さん ▶

 当組合は健康経営をコラボで進めるため、18年度から本格的な取り組みを開始しました。事業所からの照会や相談対応のため、担当職員に健康経営アドバイザー、管理職にエキスパートの資格を取得させ、親切・丁寧な相談対応ができる体制をつくりました。

 健保組合の役割は、加入者をいかに健康体にするのかが務めです。そこで、さまざまな事業を進める中で、まずは職員のヘルスリテラシーを向上させるため、全職員に日本健康マスター検定を受検させました。ただし合格が目的ではありません。知識を得て実践することは仕事や日常生活に役立てることができるので、意識を変えるための取り組みとして進めました。


近畿電子産業健康保険組合
専務理事
山川 孝司 さん

 現在、330の加入事業所のうち、21年の健康経営優良法人は大規模法人部門で6事業所、中小規模法人部門で13事業所の認定ですが、加入事業所全体の1割にも到達していません。このため、今後、その他の事業所にも積極的にアプローチしていきたいです。

齋藤さん ▶

 当組合の健康管理事業推進委員会は理事会メンバーが中心となり、年2回開催しています。委員会で、特定健診・保健指導の実施率を事業所ごとにランキングで示し、実績向上のお願いをしています。事業所へ保健師を派遣して初回面談を行うなど工夫して、実施率は徐々に上がり、今年度は16%と、総合健保としては全国平均よりも上回っています。

 22年、当組合は50周年を迎えます。健康をサポートするため事業所とタッグを組みながら、身近な健保組合を目指し、こちらから寄り添う健保組合を目指します。

──健康無関心層への対応が課題に


近畿電子産業健康保険組合
常務理事
齋藤 武延 さん

岡本(弘)さん ▶

 健康経営に積極的に取り組んでいる企業は、トップが自ら発信しています。ただし、トップから発信を行っても十分に届かない、認識してもらえない社員もいます。そうした無関心層への対応が今後の課題です。社員の健康は家族も願っていることです。自分のため、家族のためにも、健康で長生きするための取り組みを実践していただきたいです。

小松さん ▶

 健康経営優良法人の申請に当たり、当社が社員の健康について、本当に一つひとつ細かく注視していたのか、意識ができていたのかというと、そうではありませんでした。そのために何をしなければならないのか、健保組合にはいろいろな意味で指導等をいただきました。

 特に、経済産業省や厚生労働省が考えている企業責任としての社員の健康をどう会社側が認識して運営するのか。企業責任の部分に対応するのは非常に難しいことが、実際に取り組んでみて分かりました。ただし、難しいからやらないのではなく、指導をいただきながら課題をクリアしていかなければならない、そうした思いを強く持ちました。

──コラボヘルスと今後の取り組み

岡本(弘)さん ▶

 健康経営を継続し、現在の活動の成果を上げたいです。例えば、新型コロナの影響で運動不足を感じている社員もいると思いますので、ウオーキングの参加者数を増やすことで、健康に対する取り組みが進むでしょう。その上で、健康経営優良法人の認定を続けていくことを目指したいです。

 ただ、あまり無理をせず、健保組合の事業を活用して取り組んでいくことも必要です。日々の生活の中で健康になっていくことが最も大事だと思っていますので、企業としても、健保組合としても、できるだけ自然体に近く、無理のない形で健康づくりの機会等を提供できればと考えています。

岡本(崇)さん ▶

 会長と同じように、現在取り組んでいる活動の成果を上げていきたいです。当社の運動習慣の定着率は30%程度で推移していますが、できれば半分くらいの社員に定着することを目指したいです。そのためには、日々の歩くこと1つをとっても、あまり健康を意識せず、そうしたことが自分の生活の中で自然に取り入れられる状態をつくることが大事だと思います。

 われわれも社員と接する中で発信しながら、そうしたことが自然にできるような状態にしていきたいと考えています。健康が身近で当たり前の会社でありたいものです。

 今後、健康経営は少しずつ進化していくでしょう。新しい知識など勉強をさせていただく必要もあるので、身近な健保組合という立ち位置で助言等をいただければありがたいです。

小松さん ▶

 健康経営の実務を担っている担当者の交流会があってもよいのではと考えています。健康経営優良法人の申請に当たって、本当に手探りで、どうしたら良いのか分からないことがたくさんありました。年数回の交流会で情報を交換する中で、他社の取り組みで当社でも取り組める活動を吸収するなど、お互いに高め合っていければと思います。

架場さん ▶

 今掲げている目標の率を向上させることが第1です。その上で、健康経営優良法人の申請に際しての経産省のアンケートをみていて、だんだん厳しくなってきていると感じています。今後、人間ドックの受診率やがん検診の受診率、また、当社も女性社員が多くなっているので、女性特有の病気に対する活動、さらには、新型コロナを契機として、感染症対策についても考えていかなければならないと思っています。

山川さん ▶

 健康経営を浸透させていくため、事業主と担当者の意識を健康経営に向けていただくような情報発信や周知・広報が課題です。事業所間の交流会の提案もありました。確かにいいとこ取りではないですが、他社で実践されていること、気付きがない部分もありますので、前向きに検討したいです。

 健康経営は、事業所と健保組合が協働で進める必要があります。社員が健康であれば財産形成もできるので、今後とも加入事業所、加入者に、健保組合として本当の意味で寄り添い、サポートしていきたいです。

 当組合も半世紀を1つの節目として、これまで以上に健保組合の存在意義を示し、保険者機能を発揮していくため、今後も積極的に健康管理事業は展開していきたいです。信頼と安心、身近な健保組合を目指して力を注いでいきます。

※ Society5.0…サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

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