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健康コラム

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

藤久運輸倉庫株式会社

社員と家族の健康が生産性と継続性の向上の重要なファクターに

資材調達から商品配送に至るまでの物流を担う藤久運輸倉庫株式会社は、愛知県を中心に関東・関西に営業所を展開している。同社は「健康経営優良法人(中小規模法人部門(ブライト500))」に2021年、22年と2年連続で認定された。社員の二次検診や、配偶者健診にかかる費用を会社が負担するとともに、「健康経営優良社員表彰制度」を設け、禁煙やインフルエンザ予防接種などに取り組む社員を表彰している。また、コロナ感染拡大時には、ワクチン2回接種者を対象に自社で抗体定量検査を実施した。これまでの同社の健康経営の取り組みについて、代表取締役・久米博明さん、取締役・長坂充久さん、経営管理部総務課係長・小山善史さんならびに愛知県トラック事業健康保険組合の常務理事・山崎知生さん、医療施設課長・安達知広さんに話を聞いた。

【藤久運輸倉庫株式会社】
設 立:1957年1月
本 社:愛知県刈谷市宝町五丁目1番地
代表取締役社長:久米博明
従業員数:200人
「健康経営優良法人(中小規模法人部門(ブライト500))」に2021・2022年の2年連続で認定。

──社員が安心・安全に働ける職場・企業へ


藤久運輸倉庫株式会社
代表取締役 久米 博明 さん

久米さん ▶

 経営者になってから、突然、社員が重篤な病気で亡くなるという出来事が複数あり、非常にショックを受けました。従前の物流業界、特に物流を担うドライバーは、不規則な生活に陥りやすいですが、ドライバー自身、自分の健康や健康管理への意識は低い状況にあったと思います。

 また、社員のご家族が重篤な病気で入院されたこともありました。そうした状況になると当該社員は、仕事どころではなくなってしまいます。

 これらを経験したことで、社員が安心・安全に働ける職場にするために、企業は何に取り組まなければならないのか、何ができるのかを考え始めたのが、健康経営に取り組むきっかけになったと思います。

 また、少子高齢化の進行はわれわれの業界にも影響を及ぼしており、ドライバー職は減少し、高齢化も進んでいます。安定的な経営を続けるためには、ドライバーの健康の維持・管理は必須です。

 わが国での交通事故による死者数は近年、減少傾向にありますが、運行中の突然の心臓発作や脳梗塞など、健康状態に起因する突発的な事故の割合は増加傾向にあります。当社でも健診やドライバーの健康チェック等を通じて、事故を未然に防いだこともあります。

 こうしたことから、社員とその家族の健康のためにさまざまな仕組みを考え、取り組んできました。


藤久運輸倉庫株式会社
取締役 長坂 充久 さん

長坂さん ▶

 健康経営に具体的に取り組み始めたのは2018年からになります。「健康宣言」という取り組みがあることを健保組合から教えていただき、社内体制を整え、宣言をしたのが取り組みの第一歩でした。

 社内の仕組みづくりに当たっては、産業医や地域でお世話になっている医療機関等からアドバイスをいただき、本社で試行錯誤しながら基盤を整え、それらを徐々に各営業所に広めていきました。

──社員の二次検診や配偶者健診の受診を支援

久米さん ▶

 運送業事業者には、通常の定期健康診断はもちろんのこと、法令で、睡眠不足の乗務員を乗務させてはならないことや、病気で安全な運転ができないおそれがある状態での運転の防止措置の徹底、乗務前のドライバーの健康状態の把握といった責務が課せられており、安全な運行を行うためには、社員全員が確実に健診や人間ドックを受診し、有所見と判定された場合には、確実に二次検診を受診してもらうことが重要です。

 社員の健診受診率は100%ですが、有所見と判定された社員の二次検診の受診となると、どうしても不規則な就業時間であることや、そもそも「受診が面倒」という声もあり、受診勧奨をしてもなかなか動いてくれない状況にありました。


藤久運輸倉庫株式会社
経営管理部総務課係長
小山 善史 さん

小山さん ▶

 確実に有所見者に二次検診を受診してもらうために、まずは本社の総務部門と各営業所長が中心となって、その重要性を社員に伝えていくことから始めました。

 現在は、二次検診にかかる費用を全額会社が負担することで、受診へのハードルを下げています。そして有所見と判定された社員に対しては、総務部門から受診勧奨を行います。

 それでも受診してもらえない場合には、当該社員の上長から働き掛けてもらえないか相談し、最終的には、就業時間を調整して受診する時間を作ってもらい、確実に受診してもらえるよう環境を整えています。

長坂さん ▶

 こうした仕組みづくりやその運用に当たっては、やはり管理職の意識の転換、そのためのトレーニングが重要で、それがハラスメントの防止にもつながっていると思います。

久米さん ▶

 持論ですが、自分自身の健康状態は自分で判断するものではなく、エビデンスに基づき医学的に判断されるべきだと考えています。

 このため、懇意にさせていただいている産業医や医療機関の先生に、ドライバーの健康に起因する事故を防ぐためのレクチャーや健診などの取り組みにご協力いただいています。

 また、先ほど述べたとおり、社員が安心して働くためには、その家族の健康が重要です。社員の配偶者にヒアリングしてみると、自治体から健診の案内が届いても、案外、受診している方が少ないことが分かりました。

長坂さん ▶

 このため2018年度から、配偶者の健診費用を会社が負担する制度を設け、配偶者の健診受診率を高める取り組みを始めました。

 半日人間ドックや生活習慣病健診、さらには婦人科検診といった、個々人にあった健診を選択できるよう工夫をしています。21年度は15人に活用いただきました。


愛知県トラック事業健康保険組合
常務理事 山崎 知生 さん

山崎さん ▶

 健保組合の仕事は、従来は病気の早期発見・早期治療を軸として考えられてきたと思いますが、現在は、加入者の皆さまに病気にならないための健康づくりや生活習慣を身に付けていただくための取り組みが求められていると感じています。

 ただ、そうした健康に対する意識を浸透させることは難しく、成功例をみると事業所のトップの皆さんが率先して動いているのではないかと感じていました。お話を聞いて、まさにそのとおりであることを実感するとともに、社員とその家族をどれだけ大事にされているのか伝わってきました。

安達さん ▶

 配偶者健診の費用を会社で負担されているというお話を耳にしたときに、ぜひ当健保組合のホームページに紹介したいと思い、お話を聞かせていただきました。

 やはり当健保組合でも被扶養者の皆さまには、なかなか健診を受けていただけていないのが現状です。こうした各事業所の取り組みを健保組合として情報発信することが重要だと考えています。

──「健康経営優良社員表彰」で健康づくりを後押し

長坂さん ▶

 2020年度には、社員の健康経営に対する取り組みを継続・推進するため、健康経営の取り組みを意識して1年間を通じて勤務した社員を褒賞する「健康経営優良社員表彰」を設けました。

 同制度では、定期健診および二次検診の受診や、有給休暇6日以上の取得を必須事項とするほか、任意事項として、インフルエンザの予防接種や、「禁煙宣言書」または「非喫煙宣言書」の提出、献血の年3回以上の受診、骨髄バンクへのドナー登録などから2項目を選択して実践することを要件としています。年々被表彰者数は増加しており、21年度は42人を表彰しました。

小山さん ▶

 インフルエンザの予防接種については、医療機関にお願いをして各営業所で出張予防接種を実施しています。これには被扶養者も参加でき、費用は全て会社で負担しています。

 ドライバー職以外にも事務職や倉庫勤務者がおり、それぞれ勤務時間が異なることから、各営業所で年2〜3日の接種日を設けて、できるだけ多くの社員が受けられるように配慮しています。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大が起きる中で、不安を感じる社員に自身の抗体値を把握してもらい、感染予防に注意を促すことを目的に、出張抗体定量検査を複数回実施しました。この検査は、新型コロナウイルスワクチンを2回接種した社員を対象とし、全体で69人が検査を受けました。

──環境変化やニーズに応じた新たな仕組みづくりを

久米さん ▶

 今後の事業経営を考える上で、生産性の向上と事業の継続性の向上の2つが要になると考えています。そして、コロナを契機として再認識したことは、「企業は人なり」であり、健康は重要なファクターです。今年7月には会社の全額負担で、全社員を対象に団体がん保険に加入しました。

 コロナなどさまざまな社会・環境変化に対応しながら、また社員のニーズやリクエストを取り入れながら、新たな仕組みづくりや現行制度のブラッシュアップを図っていきたいと考えています。今後は、女性の活躍が重要と考えており、女性活躍の機会拡大に向けての取り組みを考えています。

長坂さん ▶

 業界全体として男性比率が高く、その高齢化も進んでいます。こうした状況を当社において、いかにして克服していくかが課題であり、今までになかった取り組みにチャレンジしていきたいと思います。

小山さん ▶

 大きな目標になりますが、社員全員が健康経営について理解を深め、さまざまな施策に参加してもらいたいと考えています。この実現に向けて引き続き頑張っていきたいと思います。

山崎さん ▶

 改めて健保組合としては、健康経営という考え方を事業主や加入者の皆さまに広めていくことが求められていると考えています。

 直近の「健康経営優良法人2022」では、当組合に加入する32事業所が認定を受けられました。こうした事業所の皆さまからお話を伺い、先駆的な取り組みや仕組みづくりを好事例として広めていきたいと考えています。


愛知県トラック事業健康保険組合
医療施設課長 安達 知広 さん

安達さん ▶

 32事業所の取り組みについては、当健保組合ホームページでご紹介させていただいております。当健保組合の加入者は2・8万人おり、その平均年齢は47歳で年々上昇しています。特に40歳以上の被保険者が2万人を占めています。

 この40〜50歳代のいわゆる働き盛り世代の健康をいかにして守るのか、ひいては企業の生産性向上にどう寄与していくのか、このことに健保組合として保健事業を通じてお手伝いをしていきたいです。

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