健康保険の基礎知識
健康保険の仕組みや保険料のこと。
いまさら聞けないことまで簡単に解説!
健康保険の抱える問題や現状を知ってください。
- 第8回
- 健保組合の仕事
日本のサラリーマンとその家族を中心に約3,000万人が加入する健康保険組合。
健康保険組合(通称・健保組合)では、サラリーマン(被保険者)の皆さんと勤務先から毎月いただいている健康保険料をもとに「保険給付」と「保健事業」という2つの大きな仕事をしています。今回の基礎知識ではこの2つの仕事を紹介します。
「保険給付」は健保組合の最も大切な仕事で、被保険者とその家族の皆さんが病気やケガをしたときの医療費の支払いや、出産・死亡・休職などのときに手当金を支給する仕事です。
例えば病気やケガなどで病院にかかった場合、皆さんは医療費のうち3割を医療機関の窓口で支払います。残りの7割は審査支払機関を通じて健保組合が支払いをするという仕組みです。
また、病気やケガの治療以外でも、いざというときの経済的負担を軽減するために、出産や死亡、長期の休業に対する生活保障としての傷病手当金の給付なども行っています。
健保組合の仕事のもう1つの大きな柱である「保健事業」は、被保険者とその家族の皆さんが健康な生活を送れるように、病気の予防や早期発見の手助けをしたり、健康増進のためのさまざまな事業を行う仕事です。「保険給付」は病気になった時のサポートですが、「保健事業」は病気にならないような健康づくりのサポートといえます。
上図のように、保健事業にはさまざまな取り組みがありますが、近年ではそれぞれの健保組合の特徴に応じた保健事業が盛んになってきています。健康診断の結果やレセプトなどの健康や医療に関する情報は、2008年の特定健診・特定保健指導制度の導入やレセプトの電子化にともない、IT化された情報をもとにさまざまな分析が可能となりました。健保組合がこうした健康や医療に関する情報を分析して、加入者の健康状態に即したより効果的・効率的に行なう保健事業をデータヘルスと呼んでいます。このデータヘルスにより、戦略的に保健事業を企画立案、実施、評価し、いわゆるPDCAサイクルを適用して効果的な保健事業を進めることが期待されています。
あしたの健保プロジェクトでは、データヘルスをはじめとしたさまざまな保健事業の取り組み事例を「企業・健保訪問シリーズ」で定期的に紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。
「保険給付」と「保健事業」は、被保険者とその家族の皆さんの健康を守るための大切な事業です。しかし、健保組合は厳しい財政状況にあります。
保険料収入のうち、42.8%は高齢者医療制度の支援に使われる拠出金に充てられているため、残りで「保険給付」と「保健事業」を行っているのが現状です。高齢者医療費がこのまま増え続けていくと健保組合の拠出金も増えていくため、健保組合が行うべき本来の二大事業に影響を及ぼしかねません。高齢者医療制度の改革を進めると同時に、私たち一人ひとりが医療費を抑える工夫も必要なのです。