健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.172

介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
親の「死に目」に会えないのは悪いこと?
高齢の親の心身の具合が悪くなると、「もしかしたら」と不安になることがあります。遠方で暮らしていると、駆けつけるのに時間がかかるのでなおさらです。
Gさん(女性50代)の父親はがんを患い、実家近くの病院に入院。Gさんが病院に行くには、飛行機と電車を乗り継ぎ、片道4時間以上かかります。
母親は心細いのか、何度も「お父さんが、危険な状態」と電話をかけてきます。「母からの電話で、2回駆けつけました。でも、危篤ということでもなかったのです。仕事を休んでばかりもいられないし、様子見をしていたら、本当に父は旅立ってしまいました」とGさん。「死に目に会えず、親不孝なことをしました」と肩を落とし、涙を流します。
少し落ち着きを取り戻したGさんは、子どもの頃の話をしてくれました。祖母から「夜に爪を切ってはいけない」と、度々言われたそうです。「何だか、祖母の顔が怖くて、親の最期はその場にいるものだと思っていました」。
そういえば筆者も、夜に爪を切ると「親の死に目に会えない」という言い伝えを聞いたことがあります。ただ実際には、医療や介護の専門職から、「一瞬のこともあり、臨終に立ち会うのは、なかなか難しい」という話を聞きます。「命の灯が消える瞬間だけを重要視することはない」とも。
親の介護や看取(みと)りで、後悔を残すこともあるかもしれません。しかし、多くの方にとっては40年、50年、60 年……と長い親子の歴史のなかでのひとコマ。あまり思い詰めないようにしたいものです。