健康コラム
企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。
企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~
株式会社群馬銀行
従業員およびその家族の心身の健康を保持・増進しパーパスの実現を目指す
株式会社群馬銀行は、「私たちは『つなぐ』力で地域の未来をつむぎます」をパーパスに掲げている。従業員およびその家族の心身の健康をパーパスの実現に向けた重要な要素と位置付け、健康経営の推進に取り組んでいる。2018年には、「健康経営宣言」を制定し、健康保持・増進策を強化した。健康経営の取り組みは高く評価されている。2026年現在、8年連続で「健康経営優良法人(ホワイト500)」(大規模法人部門)に認定され、「健康経営銘柄」に2年連続で選出されている。
群馬銀行と群馬銀行健康保険組合が実施している主な健康経営の施策としては、①ワーク・ライフ・バランス②疾病予防③メンタルヘルス④運動増進⑤環境整備――がある。それぞれの取り組みの特徴的な点やその成果、今後の課題等について、HRマネジメント部HR開発室室長の山岸舞さん、同部副調査役の田中美帆さん、総務部健康管理室で保健師の渡邉理伽さんにお話を伺った。
【株式会社群馬銀行】
設立:1932年9月
本店:群馬県前橋市元総社町194番地
代表取締役頭取:深井 彰彦
従業員数:2,797人(2025年3月末現在)
──「Well-being」を独自に定義してあるべき姿を明示

HRマネジメント部
HR開発室 室長
山岸 舞 さん
山岸さん ▶
当行では、従業員およびその家族の心身の健康は、パーパスの実現に向けた重要な要素であるということをトップメッセージとして示しています。人的資本の充実を重点課題の1つに位置付け、従業員の健康保持・増進や、積極的に挑戦し成長できる環境の整備に取り組んできました。
健康経営やWell-beingという言葉が一般的に浸透する前から、長い時間をかけて健康風土を醸成してきました。50年以上前に健康管理室を設置し、保健師を配置して健康の維持・向上に努めてきています。
2018年には健康経営宣言を制定し、「群馬銀行は、従業員の心身の健康保持・増進を積極的にサポートし、活力あふれる組織、働きがいのある風土づくりに努め、持続的な地域繁栄の担い手を育んでいきます」と掲げました。2023年6月に開示した「社内環境整備方針」においても、健康を重要なキーワードの1つとしています。
また、「Well-being」を重要な概念と捉え、「役職員一人ひとりが、ワーク・ライフ・バランスを実現しながら、自らが望むキャリアを自律的に実現していることにより働きがいを持ち、身体的・精神的・社会的に良好な状態であること」と独自に定義して、あるべき姿を明示しています。
さらに、「健康経営戦略マップ」を作成し、健康経営の推進方針として、「職場環境と自己推進力を育み、健康風土を定着させる循環を通じて、Well-beingと多様な活躍を実現し、パーパスを体現する」と掲げています。
渡邉さん ▶
当行の単一健保である群馬銀行健保組合が取り組んでいる保健事業は、全てコラボヘルス事業です。従業員だけではなく、その家族も含めた健康増進を目的とし、疾病予防、早期発見、早期治療、健康増進に向けた取り組みを行っています。
特徴的な取り組みとして、2025年度から、50歳以上の女性被保険者に骨粗しょう症検査費用の補助を開始しました。また、10カ月間の禁煙プログラムにかかる費用(約5万8000円)を健保組合が負担し、無償で禁煙外来を提供しています。
──育児サポート手当は第4子以降が200万円

HRマネジメント部
副調査役
田中 美帆 さん
田中さん ▶
ワーク・ライフ・バランスの取り組みとして、月5回の定時退行日の実施、遅くても18時30分までの退行の促進などに取り組んでいます。
休暇制度としては、ワーク・ライフ・バランス休暇(5営業日)、ポケット休暇(連続2営業日)、連続休暇(連続5営業日)を合わせて、12営業日は必ず休暇を取得するように促しています。従業員が希望すれば、保育所等に入所できたとしてもお子さんが2歳になるまでは育児休暇が取得できますし、パタニティ休暇という配偶者出産予定日の1カ月前から出産日の1年後までの間に15営業日取得できる特別休暇もあります。
第2子以降のお子さんが生まれた従業員に対して支給する育児サポート手当は、第2子が20万円、第3子が100万円、第4子以降が200円となっています。お子さんが1歳6カ月になる前に育児休業からフルタイムで復帰した従業員に対しては、早期復帰支援手当として、月額3万円を支給しています。

総務部 健康管理室
保健師 渡邉 理伽 さん
渡邉さん ▶
疾病予防に関する特色ある取り組みとして、ヘルスサポート休暇があります。以前は不妊治療に利用できるチャイルドプラン休暇がありましたが、2023年度からヘルスサポート休暇に名称を変更し、不妊治療に加え、更年期障害の治療、再検査の受診、がん検診、特定保健指導の利用に範囲を広げました。多様な用途を設けることで、従業員のプライバシーに配慮しています。
2025年度は、全従業員から希望者を募り、家族も含めた545人に唾液でがんのリスクが判定できる検査を実施しました。検査結果をみて、がん検診を受診したという声もあり、がん検診の重要性への気付きと、疾病予防・早期発見のための意識付けに効果的であったと思っています。
メンタルヘルスに関する取り組みとしては、30年以上前から健康管理室の保健師が海外拠点以外の全支店を巡回して、従業員一人ひとりと健康相談を行っています。メンタル面で不調がありそうな従業員に保健師がアセスメントをし、受診が必要であれば、早期に医療につなげています。本人の意向を踏まえ、所属長やHRマネジメント部等と情報共有をし、継続的にフォローアップをしています。
山岸さん ▶
運動増進の取り組みとして、4月29日に全従業員を対象にした運動会を開催しました。その際に、血管年齢と野菜摂取レベルの測定会を実施しました。始業前には、デジタルサイネージを使って「ぐんぎんさわやか体操」(5分程度のオリジナルの体操)を配信しており、一緒に体を動かすように促しています。健保組合と連携したウォーキングキャンペーンも定期的に実施しています。
当行の従業員の特徴として、やや運動不足で血糖値が高めという結果が出ており、2025年度は、本部行員を中心に「ぐんぎんヘルスアップ測定会」を開催しました。血管年齢、野菜摂取レベル、AGEs(糖化度)等の測定に加え、ロコモティブシンドロームのチェックもしました。
田中さん ▶
環境整備の取り組みとしては、2025年度、人員を補充できない営業店にHRマネジメント部が人的支援を行うという営業店サポートチームを設置しました。育児・介護が理由で従業員が休暇を取得する場合を最優先にしつつ、退職、休職、長期休暇等による人手不足にも対応しています。仕事をしながら、育児・介護に主体的に取り組む環境を整備し、一人ひとりのWell-beingを実現するための施策です。現在、営業店サポートチームのメンバーは、ほぼフル稼働しています。休暇取得者はもちろん、受け入れた営業店にも非常に満足していただいています。
他にもキャリア継続支援休職制度という独自の制度もあります。これは不妊治療、大学での学び直し、配偶者の転勤への帯同等で3カ月以上の休暇が必要になった場合に利用できる制度です。不妊治療の場合は、治療に必要な期間を限度とし、3カ月以上1年以内の休暇が取得でき、働きやすい環境を整備しています。
──女性が安心してキャリアを継続できる環境を整備
山岸さん ▶
2027年度末までに女性管理職比率30%という目標を掲げていますが、男女間の賃金格差が61.8%(2026年3月末正規雇用労働者)であること、女性のストレス率が男性より高いことが分かっています。産休前のキャリア面談、育休者を対象とした「職場復帰支援セミナー」、ヘルスサポート休暇など多様な制度を整備しているものの、各制度の認知度や利用率には差があります。とくに女性や若年層には、健康課題やキャリア継続への影響が懸念されるため、研修を通じた理解の促進、実態の把握が重要です。
そのため、全従業員を対象に、育児、介護、治療の両立支援に関する動画研修とアンケート調査を実施しています。2025年度は3,439人が回答し、前年度と比べて両立支援が困難と感じている方の人数・割合が減少し、管理職の部下の状況把握率は高くなりました。研修を通じて制度への理解が広がり、従業員の心理的負担の軽減に寄与できていると考えています。
女性のストレス率はわずかに改善しましたが、まだ高い水準であり、メンタルヘルス面の課題は残っています。両立支援と健康課題対応を強化して、女性が安心してキャリアを継続できる環境づくりを進めていきます。
──リーダー的役割を担い健康経営を地域に波及
山岸さん ▶
プレゼンティーズムに関する調査結果をみると、20代は低群が多く、30代は低群と高群が約半分ずつでした。ワークエンゲージメントとの関連性も有意に出ています。低群には、健診で異常所見がみられない方が多く、身体的なリスクが少ない一方、高ストレス者の割合は20代、30代で高めでした。
若年層のメンタル支援は、将来の組織成長にとって欠かせないため、全店で月1回、部下と上司が1対1で面談をする1on1ミーティングを実施しています。新入行員には、原則入行3年目以上の先輩行員をメンターとして任命し、メンタル面や職場生活面等の相談に乗っています。
お客さま対応をする渉外係へのメンタル支援として渉外業務初任者をサポートする渉外インターンを実施しています。2025年は77人の対象者全員に実施し、上司や同僚への相談機会の確保、各自のキャリアプランの伴走支援を行いました。保健師の巡回による支援も実施しています。
調査結果をみると、プレゼンティーズムの高群の増加や20代、30代の改善がみられました。高ストレスについても、20代、30代では低下しており、一定の効果が得られています。ワークエンゲージメントとの関連性も全体的に改善できており、成果が上がっていると感じています。
健康経営に関する施策や制度は、銀行と健保組合がともに地道に築いてきた結果だと思っています。Well-beingの実現のために各種制度を充実させていますが、多くの従業員が各種制度を十分に把握できていない現状があります。健康経営を、従業員が肌で感じられるようにさらなる周知を行うとともに、従業員の満足度が高まるような施策を健保組合と連携して実施していきます。
安心して働ける職場環境を提供することによって、エンゲージメントが高まったり、長期的なキャリアプランを描きやすくなったりすることを期待しています。取り組みを強化することによって、女性管理職比率、男性の育休等平均取得期間といった目標も達成できると考えています。こうした好循環の実現を目指しています。
また、当行は、群馬県内の企業で初めて健康経営銘柄に選定していただきました。当行の取り組みを地域に波及させるリーダー的役割を担っていく必要があります。今後も従業員のみならず、ご家族、お客さま、地域全体で持続可能な好循環が実現できるように、健保組合とともに取り組んでいきます。