健保ニュース
健保ニュース 2026年8月合併号
成長戦略 官民投資
ヘルスケアサービスに1.1兆円
企業や保険者の利用拡大へ
政府が7月21日に閣議決定した「日本成長戦略」は、「ライフログデータ等を活用したヘルスケア関連サービス」への官民投資を打ち出した。企業によるヘルスケアアプリやウェアラブル端末、計測機器の開発や、サービス効果のエビデンス構築などが対象で、投資額は2040年度までで1.1兆円と見込む。
企業や保険者がサービスを選びやすい環境を整備し「両者による健康投資額を25年の1兆円から40年までに約2倍に拡大する」ことを目指す。社会保障制度を含む社会の支え手を増やすとともに、セキュリティー対策や個人情報の適切な取り扱いを徹底することで、国民が安心してサービスを利用できる環境を確保することも目標に据えた。
日本成長戦略は、高市首相が議長を務める日本成長戦略会議が同日の経済財政諮問会議との合同会議で取りまとめた。首相が掲げる「『強い経済』の構築による、強く豊かな日本列島の実現」のため、▽17の戦略分野を中心とした官民連携の危機管理投資・成長投資の徹底▽国内投資を全国に拡げていくための8つの分野横断的な課題への対応▽未来への投資拡大の実現──を掲げた。
また、17分野に関連する地域の産業など、官民投資を全国に拡大するための「地域未来戦略」も、日本成長戦略とあわせて閣議決定された。
官民投資の徹底では、17の戦略分野における62の「主要な製品・技術等」を特定し、40年度までの累計で370兆円を超える官民の国内投資を想定する。62の「主要な製品・技術等」それぞれについて「官民投資ロードマップ」を策定し、▽現状認識と目指す姿【目標】▽勝ち筋の特定と官民投資の具体像【道筋】▽官民投資促進に向けた課題と政策パッケージ【政策手段】──を明示した。
高市首相は合同会議で、年末に向けた予算編成過程で「日本成長戦略実行計画」を取りまとめるよう城内日本成長戦略担当相に指示した。
戦略17分野の62製品
医薬品の開発、製造など
17の戦略分野のうち、「創薬・先端医療」分野では、①ファーストインクラス製品(全く新しい作用で、世界で初めて承認されるもの)・ベストインクラス製品(同じ製品の中で有用性が最も優れるもの)②感染症対応製品③バイオ医薬品・再生医療等製品④革新的デバイス(AI、ロボティクス等)を活用した先端医療⑤ライフログデータ等を活用したヘルスケア関連サービス──を「主要な製品・技術等」とした。
このほか、「デジタル・サイバーセキュリティー」分野に⑥クラウドネイティブに最適化された医療DX──を盛り込んだ。
⑤は少子高齢化や人口減少で労働力不足が深刻化する中、健康課題に起因する欠勤や業務効率の低下により経済損失が生じているとの現状認識の下、「『攻めの予防医療』の一環として、食事・運動・睡眠等のライフログデータを活用して行動変容を促すヘルスケアサービスの重要性が高まっている」と指摘した。
その上で、「予防・健康づくりの効果のエビデンスが十分に蓄積されていない」「企業・保険者のインセンティブを強化する余地がある」といった課題に対し、「質、量ともに優れた医療データや緻密なデータ収集経験」や「センシング技術などに強みがある計測機器とパッケージでサービス展開が可能」といった日本の強みを生かした施策を講じる。
具体的には、サービス効果のエビデンス構築のための研究支援やヘルスケアスタートアップの支援、健康経営の普及促進、健康経営優良法人制度の評価手法や保険者へのインセンティブのあり方の検討などを並べた。
⑥は、28年度までに200床以上の病院で電子カルテ普及率100%、30年までに電子カルテ普及率約100%を目標に、システムベンダーや医療機関などのクラウドネイティブ型の電子カルテの普及支援や情報システム製品の開発・普及支援などに5.2兆円を投資する。
このほかの官民投資の内容は、①スタートアップによる研究開発や国内での国際共同治験などに23.4兆円②感染症対応医薬品の研究開発支援や国内生産体制確保、抗菌薬の原料・原材料の備蓄支援などに7.2兆円③バイオ医薬品や再生医療等製品の国内製造などに20.8兆円④民間企業の新たな医療機器の研究開発などに11.6兆円──となっている。
分野横断的課題の一つには、「賃上げ環境整備」を掲げ、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇の定着を目標に据えた。医療従事者などについて、26年度診療報酬改定などによる賃上げ措置を着実に実施し、今後の経済・物価動向も踏まえ、27年度以降も現場職員の処遇改善を推進する。