健康コラム
企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。
企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~
東北電力株式会社
産業保健職による全員面談を基盤にコラボヘルスで健康経営を推進
東北6県および新潟県で初めて「健康経営銘柄2026」に選定された東北電力株式会社。健康経営の本格始動とともに組織を改編するなど全社的な推進体制を整備し、東北電力健康保険組合とのコラボヘルスも加速させた。同社では、総勢50名近くの産業保健職が毎年、従業員全員と面談を行っている。それが健康経営を推進する土壌になっているという。同社における健康経営の取り組みについて、同社人財部健康推進室長 兼 東北電力健康保険組合常務理事の小川利典さん、同室専任課長・吉野実貴子さん、主査・白鳥麻衣さん、阿部隆輝さん、東北電力健康保険組合の事務長・千葉俊一さん、宮本純子さん、栗井ことみさんに伺った。
【東北電力株式会社】
設立:1951年5月1日
本店:宮城県仙台市青葉区本町一丁目7番1号
代表取締役社長:石山 一弘
従業員数:4,587人(2026年3月末現在)
──健康経営推進を担う「健康推進室」を設置

東北電力株式会社
人財部健康推進室長
東北電力健康保険組合常務理事
小川 利典 さん
小川さん ▶
東北電力グループは「地域社会との共栄」を経営理念に掲げて、電気・エネルギーを中心とした事業を展開しています。東北6県と新潟県に拠点がありますが、いわば電気を供給しているところ全てが働く場所です。部門によって業務は異なり、オフィス業務もあれば屋外作業もあり、山を歩いて送電線の点検をする業務もありますし、当直や交替勤務もあります。社会インフラ産業として、とくに安全には厳しい会社です。
白鳥さん ▶
健康推進室では、東北電力と東北電力ネットワークの従業員1万968人の健康管理を担当しています。約9割が男性で、平均年齢は男性44.4歳、女性39.8歳。年齢構成は50歳以上が約4割を占めています。40歳以上で見ると約6割。平均年齢が上がるにつれて従業員の有所見率は悪化していて、何らかの対策を講じる必要がありました。そこで、健康施策や体制など抜本的な見直しを図り、2023年から本格的に健康経営に取り組み始めました。見直しに当たっては健保組合と一体となって検討を行いました。
第一段階は、東北電力グループ「健康経営宣言」を発出し、健康経営戦略マップを作成しました。2024年7月には、人財部に、健康経営推進を専任で担う『健康推進室』を新たに設置しました。

東北電力株式会社
人財部健康推進室 専任課長
吉野 実貴子 さん
吉野さん ▶
当社には「健康推進スタッフ」と呼ばれる産業保健職が約50名いて、本店と各支店に配属されています。そのスタッフも健康推進室の所属としました。1つの組織にすることで、一体的にスピード感を持って取り組めるようになりました。
小川さん ▶
全社統一的に推進する体制を整備することで効率的かつ効果的な業務運営を可能にし、全体の底上げにもつながっています。
──全員面談をベースにコラボヘルスを展開
小川さん ▶
会社が健康経営で目指しているのは「従業員一人ひとりが健康でイキイキと働く会社」を実現することです。そのためにはどのような施策が必要なのか、健康課題を踏まえてどのように数値目標を設定すればよいのか、産業医の指導をいただきながら目標設定していきました。

東北電力株式会社
人財部健康推進室
主査 白鳥 麻衣 さん
白鳥さん ▶
具体的には、「からだの健康」「こころの健康」「働き方」の3つを柱に据えて、11項目の指標について目標値を設定し、達成のための施策を体系的・戦略的に展開しています。
まず、施策のベースにあるのが産業保健職による全員面談です。従業員全員と年1回は面談を行い、一人ひとりの健康状態や課題に合った健康管理・健康づくりをサポートしています。従業員にも産業保健職はいつでも相談できる身近な存在として根付いています。健保組合と連携して活用している健康増進アプリについても、一人ひとりに合った使い方を面談の中で紹介してくれています。

東北電力健康保険組合
栗井 ことみ さん
栗井さん ▶
健保組合が提供している健康増進アプリ「QOLism」は、食事や体重の記録をはじめ、運動メニューの提案などさまざまな機能があり、健康的な生活習慣が身につくように設計されています。
千葉さん ▶
健康増進アプリを導入するに当たっては、会社側の意見を聞きながら選定しました。
小川さん ▶
現在、東北電力と東北電力ネットワークの全従業員の78%がアプリに登録しています。健康経営の担当役員が議長を務める健康経営推進会議においてアプリの導入の承認を得ています。つまり、アプリを活用した健康施策は全社的な取り組みとして位置付けられているということです。また、東北電力グループとして健康経営を推進していくことが命題なので、グループ企業にもアプリの登録を呼び掛けています。

東北電力健康保険組合
事務長 千葉 俊一 さん
千葉さん ▶
高い登録率は事業主側の協力があってこそです。健保組合の働き掛けだけではなかなか登録率は伸びません。事業所で登録キャンペーンを実施していただいたり、東北電力からグループ企業に登録依頼の文書を発出していただいたり、そうした支援が大きな推進力となっています。
小川さん ▶
私は健康推進室長に着任してから1年後に、健保組合の常務理事を兼任しました。健康増進アプリのように会社では導入することが難しいものでも、健保組合の保健事業で活用できることはとてもありがたいことです。お互いの強みを生かして健康経営を推進する、まさにコラボヘルスです。
宮本さん ▶
生活習慣病の重症化予防事業もコラボヘルスで実施しています。健診の結果、「要医療」と判定されたにもかかわらず医療機関を受診していない方を対象に、受診勧奨を行っています。39の加入事業所のうち、健保組合とコラボヘルスに関する協定を締結している、東北電力をはじめとする19社において実施しており、本人の同意を得たうえで、健診結果や受診有無を事業所と健保組合で共有し、活用するという内容です。受診勧奨の文書を事業主と健保組合との連名で送付することで、会社からも勧められているという意識から受診に結び付くこともあります。健保組合には保健医療専門職がいませんので、事業主側の産業保健職から働き掛けていただけることもとても心強いです。
千葉さん ▶
健康経営をきっかけに、健保組合の保健事業が従業員の健康施策に有効活用できるということが、事業主側に理解されたのだと思います。
小川さん ▶
まさにそのとおりです。健保組合が提供する種々の健康サービスが、コラボヘルスによって会社にとっても従業員にとってもより身近に感じられるようになりました。お互いがお互いのメリットを知り、活用できるようになりました。

東北電力健康保険組合
宮本 純子 さん
宮本さん ▶
健保組合としては、事業所の規模によって実施可能な取り組みに差があるので、どの事業所も健康への意識を高め、従業員の健康づくりに力を入れていただけるように働き掛けをしていきたいと考えています。厚生労働省等から提供される健康スコアリングレポートを分かりやすくまとめた「解説書」や健診結果・医療データを分析・編集した「健康白書」を健保組合独自に作成し、健康増進アプリの登録率を示すことで意識の向上を促すなど、工夫しています。
また、産業保健職がいないグループ企業の事業所については、健康保険組合連合会宮城連合会の共同設置保健師等と契約をして、講話や健診後の面談を実施しています。
千葉さん ▶
事業所によって健康管理体制が全く異なるので、事業所の希望を聞きながら補完していきたいと考えています。
──健康を大事にする風土を広める
白鳥さん ▶
そのほかの取り組みとしては健康セミナーやイベントの実施、メンタルヘルス関連の研修等を産業保健職が実施しています。スコアリングレポートで最も成績が悪かったのは肝機能。東北という土地柄か、お酒を飲む人は多いので、統括産業医のアドバイスを受けながら、問題飲酒の簡易スクリーニングやアルコール対策のセミナー等を実施しています。

東北電力株式会社
人財部健康推進室
阿部 隆輝 さん
阿部さん ▶
最近では、ノンアルコール飲料をすすめたり、「アルパ飲み」を紹介したりしています。「アルパ飲み」とは、お酒を飲むときにノンアルコール飲料をはさみながら飲むという飲み方。「アルパ」とは「アルコールパフォーマンス」の意味で、少ない量でお酒を楽しんで、体への負担も少なくすることです。
小川さん ▶
生活習慣の課題「飲酒」に焦点を当てた施策によって、2025年度の肝機能検査の結果に若干ですが改善が見られています。
吉野さん ▶
そのほか、多様な従業員が働きやすい職場環境づくりを目的に、女性の健康について理解を深めるため、女性特有の疾病に関するセミナーを開催しています。また、50歳以上が4割を占めることを踏まえ、転倒予防の情報提供をしたり、中高年齢層の運動機能を把握する「Try40」(40㎝の台で片足で立ち上がれるか)等にも取り組んでいます。
白鳥さん ▶
これまでの取り組みによって、健康を大事にしようという風土はすごく芽生えてきたなと感じています。毎年面談をしている産業保健職からも、「今までは自分の健康を後回しにしている人が多かったが、耳を傾けてくれる人が増えてきた」という話が聞かれるようになりました。従業員の健康を大事にする会社の施策が、少しずつ従業員の行動変容に結び付いてきていると思います。
吉野さん ▶
2年連続でホワイト500に認定され、今年は健康経営銘柄に選定されたことは全従業員に周知していますが、こうした発信機会が増えたことで、従業員の健康経営に対する関心や理解が高まってきていると感じています。実際に「銘柄の選定おめでとう」といった声を掛けられることも増えました。
小川さん ▶
有所見率等の健康指標はすぐには改善されませんが、信じて続けたいと思っています。社会インフラ産業として、安全・コンプライアンスは非常に重視していますが、健康への意識もそれと同じくらいになるのが理想です。従業員の健康は会社の財産なのですから、一人ひとりがその健康をしっかり守っていけるようにしていかなければなりません。
白鳥さん ▶
ゆくゆくは、経営理念にある「地域社会との共栄」を目指し、健康経営を地域に広げ、持続可能な地域社会の実現に貢献できるリーディングカンパニーになっていけたらと思います。
小川さん ▶
企業グループの社員と家族を含め、皆さんのニーズを把握して、それにマッチしたサービスを保健事業で提供し、健康経営の推進を図る。それをうまく回していけるようにしていきたいですね。そして、健康な地域社会を牽引する企業へと成長していければと思います。