健康コラム
ほっとひと息、こころにビタミン vol.103

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
年をとって変化していく親への対応は?
高齢社会が進んでいます。年をとってくると、頭も体もこれまで通りに動かなくなってきます。私自身も実感していますが、できるはずだと思っていることができなくなることもあります。しかし、これまでの経験が記憶に残っていると、そうした変化を受け入れることがなかなかできません。
そうした親の戸惑いを見ていると、子ども世代、孫世代の人たちもまた戸惑ってしまいます。子どもや孫の話を聞かないで自分の話ばかりをしていて会話が成り立たなかったり、自分の主張を変えようとしなかったり、さらには根拠がないのに自分が被害者のようなことを言い出したりして、ご家族が戸惑うことも少なくありません。
だからと言って、親を説得して考えや行動を変えさせようとすると反発されて、関係が悪くなることさえあります。他の人の考えや行動を説得して変えさせることは基本的に難しいのですが、高齢の方の場合には一般的に、これまでの経験が豊富なだけに説得するのはさらに難しくなります。
ですから、そうしたときには高齢の親の言動を変えようとしないで、まだ柔軟に現実に対応できるご家族が高齢の親の考えに合わせるようにしたほうがよいでしょう。
そうは言っても、高齢の方の言動のためにご本人が危険な状態になりそうだったり、ご家族や関係者の方々がひどく迷惑するようになったりすることもあります。そのような場合には、高齢の親に対して、何が問題かをきちんと話をしながら、好ましくない行動を強く制止する必要があります。状況を見ながら硬軟織り交ぜて対応していただければと思います。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる!うつの人が見ている世界』(池田書店)など。